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平和な日常~秋~2

「ちっ!」

相手の隙を突き出塁した横島に中等部チームのベンチは沸くが、相手ピッチャーは気に入らないらしく舌打ちをして横島を睨む。

横島はそんなピッチャーを放置して観客席のタマモ達に手を振るが、苛立った相手ピッチャーが無警戒で投球モーションに入った隙に盗塁してしまう。

相手ピッチャーの牽制はまだ横島も見てないが、正直三回まで投球フォームを見ているので相手の癖や投げる球種まで分かっていた。

横島は遠慮なくヒャクメの能力で相手を解析してしまったらしい。


「あのピッチャー、多分スライダー投げる時に少し腕が下がりますよ」

結局三回は後続が続かずに0点で終わるが、横島は四回の攻撃の前になんと相手ピッチャーの癖をチームのメンバーにバラしてしまう。


「本当かい?」

「ええ、あと変化球は振らない方がいいっすよ。 ほとんどボール球で空振り取りに来てますから」

即席のチームであり中等部のチームには草野球と高校野球の経験者しか居ない。

横島はこのままでは勝てないと考え、相手の癖や対策をチームメイトに語っていく。

実際ここで横島の話を信じるかどうかはまた別問題なのだが四回は上位陣に回るため、彼らは一応横島のアドバイスを頭に入れつつ打席に入ったようだ。


「君、素人じゃなかったのかい?」

「野球が小学校以来なのは本当っすよ。 ただ目はいいんです。 フォークもあんまりコントロール良くないみたいですし、ストレート狙っていけば打てますよ」

その後横島のアドバイスは見事に当たってしまいチームは勢いづいていく。

上位陣はストレートに的を絞り、ヒットとフォアボールで四回は連続で出塁してしまった。

残念ながら点には結び付かなかったが、相手ピッチャーの余裕がなくなってきたのは確かである。

中等部チームにとって幸いだったのは、相手チームのキャッチャーがあまり上手くないことだろう。

特に変化球に関してはポロポロとこぼしており、ピッチャーも投げにくそうなのだ。

元々ピッチャーが変化球のコントロールが悪いことも影響してるが、ストレートだけならば打てない球ではない。



その後試合は接戦になってしまい3対2で終盤を迎える。

この野球大会は特別ルールなので七回で終わりなのだが、中等部チームは最終回に一点リードを許していた。

四回以降は横島がちょこちょことアドバイスをした影響もあり試合自体は接戦だったが、あと一点が取れなかったのである。


(ツーアウトランナー無しかぁ)

そして試合は最終回のツーアウトランナー無しで、再び横島に打席が回ってしまう。

ちなみに横島の第二打席はフォアボールであり、この打席は第三打席になる。

第二打席はわざとファールを打って加減する感覚を掴もうとしたのだが、ピッチャーがストライクが一球も入らぬままフォアボールになっていたのだ。


「あら、随分接戦になってるわね。 なんで彼が出てるの?」

横島が最後のバッターになるかというその時、観客席には刀子が訪れていた。

彼女は自身の参加種目は昨日で終わり今日は中等部関連の応援に回っていたらしく、保護者チームの応援に来たらしい。

偶然応援に来た刀子は打席に入る横島を見て驚きの表情を浮かべてしまう。

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