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平和な日常~秋~2

まあ実際には彼らのような報酬目当ての人ばかりでも困るが、代々家系だからと魔法使いになり魔法協会に忠誠を誓うような人は現実的には極々限られている。

それに参加動機が報酬や就職でも中には魔法や魔法協会の存在意義を学ぶに従って、自分達の街や国を守る手助けになるならばと積極的に協力する者もそれなりにいた。

そもそも理想では飯が食えないし、かと言って魔法自体が大きな利益になる訳でもないのだ。

魔法協会にはそんな人々の理想と打算の微妙なバランスを取る必要があった。


「それを理解しただけでも貴方達の将来に役立つわよ」

「ですかね。 まあ俺なんかは魔法で出世出来るだけの力量がないんで、過剰な期待はしてないですけど」

「魔法で出世ね。 それこそ期待しない方がいいわよ。 高位の魔法使いでも実際に高等魔法なんて滅多に使わないし、魔法しか取り柄のないような人間は、それこそ何処に行っても出世なんて出来ないわよ」

そのまま世間話をしながら見回りを続ける刀子達だが、彼らは表向きな立場は広域指導員の刀子とボランティアの生徒による市内の巡回である。

麻帆良祭と同じく体育祭も夜遅くまで騒ぐ者などが多いので、臨時の警備員やボランティアの立場で多くの魔法生徒が見回りに歩いていた。

今回刀子が組んでる相手が大学生なこともあり、魔法絡みの就職や将来について相談されることも割とよくあることだった。


「でも葛葉先生ほどの実力があれば、違うんでしょう?」

「十代の楽しい時期を修行漬けにする覚悟があるならね」

「それは流石に……」

魔法関係者において現実的な目標というか憧れの対象は、高畑や刀子などの実力者である。

実際に代わりがいないほどの実力者はそれだけ収入もいい。

魔法という力を習得した人間は、多かれ少なかれより強い者に憧れる傾向が強かった。


「よほどの才能があれば別だけど、魔法も剣も普通に学ぶなら相応に時間がかかるわよ。 貴方達も今から十年修行に費やす覚悟があるならいい師匠を紹介してあげるけど?」

大学生という立場上、将来に悩む者が少なくない。

一般には秘匿された魔法に魅力を感じる者も少なくないが、一流になるまで修行にかかる年月を告げるとほとんど引いてしまう。

少しからかうような柔らかい口調の刀子の十年という言葉に、若い魔法使い達は苦笑いを浮かべて断っている。


(やっぱ葛葉先生変わったよな)

一方若い魔法使い達は、刀子が以前に比べて優しくなったとシミジミと感じていた。

以前は何処か近寄りがたいオーラがあり、お固いイメージが強かったが最近は性格が丸くなったと噂である。

実際若い魔法使い達の雑談に参加して冗談を言うなど以前はなかったのだ。


(あの彼氏の影響なんだろうな~ 羨ましい)

そして刀子が変わった原因として、横島と深い関係になったからという噂も魔法関係者を中心に根強く広がっている。

横島には女性が苦手だとの噂もあったが、魔法関係者などの間では横島が複数の女性と付き合ってるとの噂も流れていた。

まあそんな彼らの見回りは、この後三時間ほど続くことになる。



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