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平和な日常~秋~2

「本当に可能性はないのか? ナギの復活を諦めてない可能性もあるし、息子にも興味を示してたんだろう?」

詠春は長い付き合いからアルが情報提供元の可能性は低いと伝えるが、他の面々は半信半疑だった。

彼らも詠春を疑う訳ではないが、嘘を付くならば詠春よりもアルの方が上手なのは確かなのだ。

無論近右衛門や雪広夫妻や那波夫妻もアルが麻帆良を犠牲にしてまでナギの復活を企むとまでは考えにくいが、麻帆良で勝手に創造主ごとナギを封印した前科があり信頼度はない。


「万が一の場合は私がアルを斬りますよ」

結局アルが情報提供元だとはっきりした場合は、詠春がアルを斬ると約束したことでこの場を収めるしかなかった。

実のところ詠春のみならず、あやかの父と千鶴の父もナギやアルと面識がある。

ただ彼らのナギやアルの評価はあまり高くはない。

何より二十年前の戦争後、アリカ女王と赤き翼が政争から逃げたことを彼らは問題視している。

旅をしながら人々を助けたと言えば聞こえは言いが、要はメガロメセンブリアの政争から逃げただけとも言えた。

無論そこにはアリカ女王の戦後の混乱を長引かせない為の政治的な判断があったことは皆が重々理解している。

しかしあそこまで魔法世界を混乱させたのならば、多少の混乱が続いても問題を完全解決すべきだったとの意見があることも確かなのだ。

特に赤き翼を密かに支援していた者達は、中途半端な幕引きに失望してしまっていた。


「学園長先生、連中の目的はやはり向こうの世界の変革でしょうか?」

「恐らくそうじゃろう。 無論確証はないがの」

情報提供元の件が一段落すると話は秘密結社完全なる世界に戻るが、彼らの目的が二十年前と同じならば厄介だった。


「最悪の場合は二十年前の再来か?」

「我々にとっての問題は、選民意識の高い向こうの連中が大量にこちらの世界に来ることだろう」

完全なる世界の復活における最悪の事態は二十年前の戦争の再来と魔法世界の終焉だが、こちらは実は関東魔法協会に直接的な害はない。

現在の日本にはメガロメセンブリア勢力の拠点はなく魔法世界側が麻帆良を抑えるには武力制圧しかないが、世界樹地下の休止中のゲートの封鎖を含めた防衛策は厳重に敷いている。

仮に地球側の大国と呼ばれる国家がメガロメセンブリア勢力と一緒に日本に武力侵攻でもするならば話は変わるが、現在の地球側の世界情勢でそこまでメガロメセンブリアを信頼してる国家は存在しない。

対魔法勢力に限定すれば関東魔法協会は必要とされる防衛力は保持していた。

そんな現状で彼らが一番危惧しているのは、選民意識の高いメガロメセンブリアの特権階級の人間が地球側に来ることである。

もし魔法世界が消滅でもして高い選民意識のある彼らが大量に地球側に流入すると、とてつもない混乱が起きるのは目に見えていた。


「正直、魔法協会だけの手に負える問題ではないですわ。 今は情報を集めながら力を蓄えて、万が一の時に連携する味方を増やすしかありません」

その後も議論は白熱するが、完全なる世界と魔法世界の行く末の問題は一国の魔法協会の力量や権力で解決出来る問題ではない。

最終的には情報収集関連の更なる強化と、魔法世界消滅後の影響を検討することが早急に必要だとの意見で纏まることになる。



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