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平和な日常~秋~2

木乃香の決勝進出に沸いた横島達だが、その日の夜は打って変わって静かな夜だった。

いつもならばそのままの流れでパーティーになるのだろうが、この日は久しぶりに家族と過ごす者が多いので静かなのだ。


「今日はカキの土手鍋とカキフライにしてみたぞ」

そんなこの日の夜に横島の家に来ていたのは、家族が来なかった夕映と家族が居ない明日菜の二人である。

木乃香やのどか達は家族と夕食を共にするらしく来ていない。

日頃は店を営業しているので一階の店で夕食を食べてるが、この日は完全に休みにしたので久しぶりに二階のリビングで夕食にしている。


「結局木乃香は二位なのよね」

「やっぱあの人に洋菓子で勝つのは難しいな」

美味しそう煮えてる熱々の鍋を囲みながら横島は明日菜達と今日の出来事を話すが、やはり一番頑張ったのはこの場に居ない木乃香だった。

しかしそんな木乃香も予選と同様に新堂に負けている。

まあ予選よりは点差は縮まったが、正直横島も木乃香が新堂に勝てるような秘策はなかった。


「トトカルチョも新堂先輩の三連覇が一番人気ですよ」

準決勝が終わりさっそく決勝のトトカルチョが始まっていたが、本命は文句無しに新堂だった。

ちなみにトトカルチョの倍率なども体育祭特設ホームページにて体育祭の情報と一緒に掲載されており、夕映はそれを見ながら料理大会でも何枚か食券を賭けてるらしい。

流石に木乃香の対戦相手には賭けてないようだが。


「まあ、なるようになるさ。 それに結果がどうであれ、いい経験になったんだから十分だよ」

実際決勝まで勝ち上がると欲が出てしまい優勝を狙いたくなるが、正直横島は木乃香の優勝には複雑な気分だった。

勝って欲しい気持ちももちろんあるが、現状の木乃香には不釣り合いの名誉は必ずしも木乃香の為にはならない。

周りに押される形で出場した料理大会で優勝してしまい、体育祭後に木乃香が決めてもない将来のことや、パティシエとして過剰な期待と注目を集めプレッシャーを感じることは避けたいのである。

ただ現状でもすでに体育祭後にはかなりの期待と注目を集めることは確かなので、横島としては木乃香をそう言った外野から守る必要があるとも密かに考えていたが。


「あしたはおっきなはなびがみれるんだよね! たのしみ」

一方タマモは明日の体育祭とその後に行われる後夜祭を楽しみにしていた。

明日は体育祭の二日目で最終日だが、体育祭が終わるとそのまま後夜祭に突入する。

実は体育祭の後夜祭では、花火大会も同時に行われる予定になっていたのだ。

いかに麻帆良がお祭りが多い街とはいえ花火大会は、麻帆良祭の三日間と体育祭の後夜祭の一日の計四日しかないのである。

特に体育祭の後夜祭で行われる花火大会は、三万発の花火が打ち上がる麻帆良で最大の花火大会であった。

麻帆良祭と違い生徒や地域住民がゆっくり見物できることもあり、麻帆良の秋の風物詩として楽しみにしてる者も多い。

横島や明日菜達はそんな花火大会を楽しみにするタマモに思わず笑みがこぼれていた。



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