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平和な日常~秋~2

横島達の他にも何人かのクラスメートや友人が見守る中、いよいよスイーツ部門の準決勝が始まる。

十人の準決勝進出者を順番に紹介すると、いよいよ課題が発表された。


「そうきたか」

準決勝の課題はロールケーキだった。

洋菓子では割とポピュラーなロールケーキだが、ヨーロッパでも馴染み深く薪や丸太の形をしたクリスマスケーキであるブッシュ・ド・ノエルもロールケーキの一種である。

日本ではパンコーナーなどでも売られておりかなりメジャーなスイーツの一つだが、シンプルな分応用がしやすくパティシエの腕前が発揮しやすいスイーツであろう。

そんな課題が発表されると会場が歓声で沸くが、横島は課題が予測の範囲内だったことにホッと一息つく。

この二週間木乃香のレパートリーはさほど変わってなく、基本的な技術の向上に励んで来た。

特にスポンジ生地は一番時間をかけて特訓しただけに、横島が安堵するのも無理はない。



「それでは調理を開始して下さい!」

進行役の学生が調理開始を告げると、いよいよ調理が開始される。

制限時間は一時間四十五分であり、それが長いと感じるか短いと感じるかは個々によるだろう。


「殺気だってるな~」

「こわいね」

調理開始と共に選手達は一斉に食材が置かれてる場所に急ぐ。

その様子は真剣そのものであり、中には殺気だってる者も居る。

食材に関しては準決勝からは完全に持ち込み禁止となっており、大会側が色とりどりの食材を十分用意していた。

しかし一分一秒でも時間が欲しく良質な食材が欲しい選手達は、まるでバーゲンセールの主婦のようにフルーツを取り合いしている。


「うひゃ~、みんな凄いなー」

そんな中で木乃香は他の選手の勢いに完全に乗り遅れてしまい、とりあえず競争が起きてない牛乳や卵や粉類などから選び始めた。

出場選手は木乃香以外は高校三年から大学生までであり、間違っても木乃香が加われる勢いではない。


「あっ、新堂先輩こんにちは~」

他の選手と離れてじっくりと食材を選ぶ木乃香だが、奇遇にも同じく他の選手と違う行動をしていたのは、予選で圧倒的な実力を見せた昨年の優勝者である新堂美咲だった。


「こんにちは、近衛さん。 貴女は落ち着いてるわね」

「ウチ、争いは苦手なんで、他の人みたいには無理なんです~」

「それでいいと思うわよ。 無理に他人と張り合う必要なんてないわ。 予選の実力を出せば貴女にもチャンスはあるもの」

新堂は木乃香の選んだ食材を見て微かに柔らかい笑みを浮かべる。

会場には卵や牛乳ですら複数種類置いてあり、木乃香は一つ一つ確認しながら選んでいた。

選ぶ食材を見れば木乃香の実力が分かるのだろう。

そのまま木乃香と新堂は他の選手と入れ代わるようにフルーツを選ぶが、新堂は木乃香にフルーツを先に選ばせるほどの余裕を見せて会場が更に歓声に包まれる。

というか新堂美咲は男子大学生を中心に相当人気があるらしく、男子大学生の応援集団が来ていた。



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