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新しい生活

同じ頃、六道女学院ではかおりが明らかに落ち込んだ様子であった

普段の高飛車な態度も高いプライドも全く見えない姿に、クラスメートや先生は驚き言葉をかけることすら出来ない

そしてもう一人の当事者である魔理だが、彼女は欠席している



「弓さん、何かありましたか?」

最近はずっと自分のことで精一杯だったおキヌだが、かおりのあまりに落ち込んだ様子にたまらず声をかけていた


「氷室さん……」

おキヌに声をかけられたかおりは、申し訳無さそうにうなだれてしまう

あまりに無神経だった今までの言動を思うと、恥ずかしくて何も言えない

しかもおキヌに隠れて横島と問題を起こしてしまったなどとは、余計に言えなかった


(私はなんてことを……)

心配そうに気遣うおキヌの顔を見た途端、かおりは顔を青くして震えている

自分が正しいと信じて行った事の結果を、未だに受け止める事が出来てないのだ


「弓さん、話せる時が来たら話して下さいね。 私じゃあ相談相手にもならないかもしれませんが…」

自分が声をかけた事でかおりを追い込んでしまったと勘違いしたおキヌは、優しく言葉をかけて席に戻っていく


しかしおキヌの優しさが、余計にかおりの罪悪感を掻き立てていた

信じていた価値観が崩壊している今、かおりはただ静かにうつむくしか出来ない



その頃魔理は、一人街をぶらついていた


(アタシは見た目や態度で相手を判断する愚かさを、誰よりも知っていたはずなのに……)

魔理もまた、おキヌに会わせる顔が無く学校をサボっている

そして考えていたのは、やはり昨日の事だった


魔理は今まで見た目の態度や姿で、不良や危ない人間などと散々言われ続けて来た

自分がどんなに変わろうと決意して頑張っても、周りは誰も認めない

そんな苦しい経験をしている自分が、横島の事を見た目で判断して決め付けてしまったことが許せなかった


「甘かったのかもな… アタシがGSになるなんて…」

子供じみた正義感と中途半端な行動がどんな結果を生むのか、魔理は身をもって感じている

自分が考えていたより遥かに危険で大変なGSに、自分のような半端者がなれるとは思えなかった


「善悪の無い問題か……」

いくら考えても、魔理には誰かが悪いとは思えない

横島もおキヌも令子も、みんな精一杯生きている

小さなすれ違いが大きくなり関係が破綻した

それだけなのだ


「はあ……」

そして魔理が一番苦しんでるのは、友達だと思っていたおキヌの事すら何も理解してなかったことである

おキヌの苦悩も理解せず勝手な真似をして、問題をこじらせた自分が許せなかった



かおりと魔理の二人は、未だに頭の整理すら出来てない

しかし令子を絶対的に信じていたかおりと、GS業界と関係の薄かった魔理ではショックの度合いや悩み方が微妙に違っている

かおりは何を信じていいかわからず、何も考えられない状態だが

魔理は不良と呼ばれ人の裏側などを多少なりとも見てきただけに、少しずつ頭を整理している


現状ではかおりの方が重症ではあるが、何かと投げ出しがちな魔理もまたどうなるかわからない

おキヌを含めた三人は答えの無い迷路に迷い込んでいる

そんな彼女達の苦悩は始まったばかりかもしれない


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