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新しい生活

「確かに昨日の様子だと、前は相当酷かったようだね。 私は姉さんと一緒に居るアイツしかほとんど知らないから、違和感は無いけど…」

魔鈴の表情に、ベスパは昨夜の騒動を思い出していた


真剣に話した横島に対する周りの驚きの視線や表情

それに加え圧倒的に見下して責め立てたかおりと魔理の行動を考えると、前の横島はよほど特殊な扱いをされいてたことは簡単に想像がつく

それがいい部分と悪い部分の両方あるのは理解してるが、表面上の横島しか見てないのは明らかだった


「元々は美神さんが原因だったのだと思います。 あの人が横島さんを一番特別視してましたから… 私も含め周りの人々はみんなそんな横島さんを当たり前だと思っていた。 私が本当の横島さんに気付いたのは偶然の結果です」

複雑な表情のまま語る魔鈴は、せめて自分だけはもっと早く気が付いてやるべきだったと後悔している


「美神令子か… あいつもいろいろと非常識だからね」

かつて令子がアシュタロスにヘッドバッドをした時の衝撃が、今でもベスパには強烈に残っていた

あれも令子の非常識の一部でしかない事を知ったのは、アシュタロス戦後である



「私、正直言うとベスパさんやパピリオちゃんが私を見てどう思うか、不安な気持ちがありました。 ルシオラさんの気持ちを思うと尚更…… でも、会ってみたら気が付いたんです。 二人がいかに横島さんを大切に想ってるか」

会話が途切れた時、少し申し訳なさそうな笑顔を浮かべる魔鈴は、二人に会う前の素直な気持ちを語っていた


「姉さんの希望は横島の幸せと未来。 私がアシュ様に未来を生きて欲しかったように、姉さんは横島に未来を生きて欲しかった。 でもね… 姉さんだって死にたかった訳じゃない。 きっと横島との幸せな未来を夢見てたはずなんだ」

素直に気持ちを語る魔鈴に答えるように、ベスパも自分の中にある気持ちを語り始めた

「昨日、あんたが姉さんを復活させると言い切った。 あの言葉できっと姉さんは救われたと思う。 そして私やパピリオも、横島の隣に居るのがあんたでよかったと思ってるよ」

それはベスパの素直な想いである

ルシオラの事を受け止め、横島と共に抱えて生きて行ける女性

そんな女性である魔鈴が横島の恋人で、本当によかった思っていた


「ベスパさん……」

ベスパの抱える複雑な想いを痛いほど感じた魔鈴は、それ以上言葉が続かない


横島の苦しむ様を間近で見てきた魔鈴だけに、ベスパもまた癒える事の無い深い傷があることに気が付いていた


(今の私には何も言えませんね…)

下手な慰めの言葉や同情はベスパの想いを侮辱することになると思い、魔鈴はあえて何も言わなかった

自分に出来るのはこれから先を共に生きて、いつの日かルシオラに会わせることだろう


そんな新たな決意を、魔鈴は心に誓っていた



それからほどなくして横島達が戻って来る

相変わらず元気いっぱいの三人と少し振り回され気味の横島の姿は、魔鈴やベスパの胸を温かい気持ちで満たしていく


「楽しかったかい?」

「凄かったでちゅよ~ ベスパちゃんともう一回乗りたいでちゅ!!」

優しく語りかけるベスパに、パピリオは嬉しそうに答える


(ベスパ…?)

そんな二人を見ていた横島とタマモは、ベスパの何かが変わった気がした

具体的にはわからないが、何か肩の力がまた少し抜けた気がしている

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