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新しき絆

「どっちの先生が本当の先生でござろうか…」

シロは最近少し悩んでいた

昔は裏表の無かった横島が、今は全く別の顔を持っている


それが理解出来なかった

「どっちも横島よ… ただ… 美神達には心を許してないだけ…」

タマモは静かに話した

シロは何も知らない…

そして、まだ教えない方がいいと考えていた

タマモに比べてシロは幼い

まだ知るべき時では無いと考えていたのだ


「横島も辞める準備はほとんど終わってるからね… 私達のメドがたった今、いつ辞めてもいいのよ… 横島も心のどっかで、それを理解してるわ。 その分、本心が少し出てるのよ…」

タマモは横島の変化を微妙に感じていた

横島が魔鈴の存在によって、随分安定しているのも感じていた

そして張りつめて壊れそうだった横島の、人間らしさが戻ってきたのも感じていた…


その分前と違い心に隙が出来てきた為、令子やおキヌに違和感を与えて、横島の本心に気づくかもしれないキッカケになっているが…


タマモはそれでいいと思っていた


今の横島は一人じゃない…

魔鈴も雪之丞もシロも自分も居る…


横島が一人で背負い込む必要は無いのだから……


令子やおキヌの監視は自分がしよう


タマモは密かに心に決めていた


「うーん… 先生が困らないならいいでござるが… それにしても美神殿は機嫌が悪いでござるな~」

シロは少し考えたが、横島が困らなければあまり興味が無いようだ…


「美神は横島が冷たいから寂しいのよ。 ああ見えて寂しがり屋だし、横島が美神を見てないのに微妙に気がついてるのが理由よ…」

タマモは淡々と話していた

タマモは美神に殺されかけたのだから、好きでは無いのだ…


「寂しいなら優しくすればいいのでは?」

シロは不思議そうに首を傾げる


「それが出来たら美神じゃないわ… 何よりも自分のプライドが一番なんだから…」

タマモは呆れたように説明する

愚かな美神も、気がつかないシロにも少し呆れていた…


「厄介な人でござるな~」

シロは顔をしかめていた


「あれは美神の親の育て方が悪かったのよ…」

タマモは美智恵を思い出して少し考えていた

運命に勝つためとはいえ、あの育て方は間違いだろうと…


「美智恵殿でござるか… あの人もよくわからないでござる… 本心を上手く隠すゆえ…」

シロはなんとなく感じていた

美智恵の裏表の激しさを…

まだ子供のシロだが、人狼のシロは気をつければ人間よりも敏感なのだ…


「あの人が一番危険よ。 美神は意地っ張りだから、横島が離れたら追えないわ… でも美智恵は諦めないでしょうね…」

タマモが一番警戒してるのは美智恵だった…


令子やおキヌは一緒に暮らしてるので、性格などよく知っている…


だが美智恵はタマモにも読めないところがあった…

そして、文句や説教をしつつ、娘の好きにさせている

結果的に甘やかしているように、タマモには見えていた


シロとタマモはそんな会話をしながら、魔鈴の店に向かっていた…



その頃令子は…


オカルトGメンの美智恵に愚痴をこぼしていた…


「横島のやつ最近生意気なのよね~ 仕事にはほとんど来ないし、冬休みも来れないって言うのよ!」

令子はグチグチと美智恵に話していた


「高校生活最後の冬休みだもの… やることもあるわよ」

美智恵はワガママな娘に呆れながら苦笑いしていた


「でも、仕事の方大切でしょ?」

令子はふてくされたように次々に話していた


「仕事って… 彼はバイトでしょう? 学生の本分は勉強よ。 まして、時給255円じゃ来たくもなくなるわよ」


美智恵は少し娘の危機感を煽ろうとしていた…

横島があの事務所を辞めることは無いだろう…

だが、もう少し素直にならないと危ないとは思っていた

おキヌの存在もあるし、シロやタマモも横島に懐いている

いつまでも、今の関係が続くとは思ってなかった


このままでは誰かに先を越される

美智恵はその危機感をもっていた


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