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平和な日常~秋~

一方麻帆良の郊外にある山林の中では刀子と刹那が剣を交えていた。

あまり人の手が入ってない山林は鬱蒼と生い茂る草木で普通に歩くのも大変なのだが、二人は実戦感覚を維持する為に時々山林などに来て実戦に近い環境で修行を積んでいる。


「やっぱり修行不足かしらね」

この日刀子は久しぶりに気合いの入った修行をしていたが、仕事の急がしさなどから最近修行不足であり実戦感覚が微妙に鈍ってることに渋い表情を見せた。

神鳴流剣士として魔法協会でもトップクラスの実力を持つ刀子だが、その仕事はどちらかと言えば中間管理職であり直接的な戦闘をすることはあまり多くはない。

基本的には近右衛門や木乃香などの要人警護を統括する立場であり、明確に組織化されてる魔法協会において正式には近右衛門の直属の部下である。

近右衛門の信頼が厚く近右衛門自身が実力者な為、基本的には学園内においては木乃香やあやかや千鶴などの要人警護を指揮していた。

まあ学園内に高畑のような実力者が居ない時は刀子が現場に出ることもあるが、正直刀子が現場に出るような問題は滅多にない。


一方の刹那もまた木乃香の警護の専任にされているので実戦経験はほとんどなく、時々龍宮に誘われて彼女の仕事を手伝う程度だった。

そもそも関東魔法協会でも実戦と言えば、何者かに召喚された低級の魔物や式神などの討伐くらいしか実戦がない。

基本的には人に害を成す妖魔を退治もしているが、霊的環境の違いからか横島の世界と違いほとんどその手の仕事はない。

加えて日本国内の妖魔の退治は関西呪術協会の方でほとんどやっており、関東魔法協会はどちらかと言えば他国の魔法協会や国家などの諜報への対応で忙しい。

正体不明の召喚魔や式神なんかも、他国の魔法協会などが麻帆良の実力を計る為に放ってる程度だった。

基本的には被害が出るほどの事件は起こさないのである。


「あの、私達が両方お嬢様から遠く離れていいんですか?」

「今日は高畑先生が対応するから大丈夫よ。 それに最近は横島君の店から出ないもの」

久しぶりの修行に刀子は少しすっきりしたようだが、刹那は木乃香から離れてるのが不安らしい。

一応魔法関係者が護衛については居るが、刹那とすれば自分と刀子の両方が離れるのは少し不安なようだった。


「しかし今は……」

刹那がいつもに増して不安そうなのは、秘密結社完全なる世界の幹部が生きていたとの情報からである。

二つの世界を激震させたフェイトの情報を、近右衛門は魔法協会内にも知らせたのだ。

まあ知らせたというか、実際には隠すことが不可能だったと言うべきかもしれないが。

無論麻帆良が狙われる可能性などは秘匿されたが、フェイト発見の情報はすでに幹部クラスだけに隠しきれないほどに世界中で広がっている。

麻帆良ではすでに警戒レベルが平時よりワンランク上がっており、麻帆良祭ほどではないが魔法協会員達は多少緊張感を高めていた。

近右衛門は高畑が当面魔法協会に待機する旨も同時に伝えており、緊張感と不安や安心のバランスに苦心している。

ただ刹那の場合はそれでも不安らしいが…。



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