このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

平和な日常~秋~

「へ~、料理大会に出るんか~」

その日の放課後店を訪れた木乃香は、料理大会に参加する不安を横島に打ち明けていた。

そもそも木乃香はあまり注目された経験がないらしい。


「横島さん料理大会とか出た経験はないん?」

「ある訳ないだろう。 俺の料理は趣味みたいなもんだからな」

どうも木乃香は横島ならば料理大会の経験でもあるかもと期待したらしいが、元々横島の技術でない料理の大会経験なんてあるはずがない。

夕映なんかは横島の言葉を半分ほどしか信じてないので疑いの眼差しを向けているが、それでも夕映も横島が大きな大会やコンクールに出た経験はないだろうと考えている。

案外小心者な横島を知る夕映からすると、目立つことからは逃げてきたのだろうと解釈していた。


「それで出場する部門は?」

「それはまだ決めてないんや。 何がええと思う?」

「好きなのにしたらいいんじゃないか? ただ木乃香ちゃんの技術とかレパートリーを考えると和食と中華は難しいだろうけど」

相変わらず軽い調子の横島に木乃香は出場する部門の相談を始めるが、横島は勝ち負けを気にしてないので好きな部門でいいのではと考えている。

ただ技術的な観点から見ると和食と中華は木乃香には不利だった。

元々木乃香は母に料理の基礎は教わったが、それは家庭料理の域を出てない。

京風の和食の基礎は一応最低限は身につけているが、大会に出るのは少しレパートリーなどで不安が残る。

そうなると横島から教わった技術が中心になるが、こちらは客層の影響からか洋食系とスイーツに偏っていた。

そもそも木乃香は料理人を目指してた訳ではないし、横島も木乃香を料理人にしようと考えていた訳ではない。

横島が日々作りたい料理や客が求める料理を、一緒に居る木乃香になんとなく教えていただけなのだ。


「皆さん結構期待してるのですよ」

横島とすれば木乃香が何故悩むのかあまり理解してないが、夕映は周囲の期待が大きすぎることを説明する。


「そっか~、出る以上は勝ちたいよな。 となると、まずは大会のルールと去年までの大会の様子の資料を集める必要があるな」

「それならばすでに集めてきたです」

正直あまり気が進まない木乃香だが、出場するからには勝ちたいらしく悩んでるらしい。

そんな木乃香に横島は対策くらいは立ててやろうかと資料を集めるように言うが、なんと資料はすでに夕映とのどかで集めて来ていた。


「気が利くな~ 下手な社会人より仕事が早いし……」

「この手の大会で対策を立てるのは常識ですよ。 それに横島さんのやり方も理解してます」

横島はさっそく二人が集めた資料に目を通すが、夕映達は大会のルールだけでなく近年の大会の様子を撮影したDVDまで用意している。

その先読みと仕事の速さに驚く横島だが、夕映からすると対策は常識だし横島の考えそうなことも理解していたらしい。


「いや……、それを実際に出来る学生がどれだけ居るやら」

確かに夕映の行動はちょっと考えれば出来ることだが、それを普通に出来る学生は多くはない。

実際横島に関わってから夕映もまた様々な経験を積んでおり、行動力は確実に上がっていたがやはり本人は気付いてないようだ。

ともかく横島は料理大会の資料に目を通していくことになる。



41/100ページ
スキ