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平和な日常~秋~

それから数日後の関東魔法協会情報部では、早朝に舞い込んだ一つの情報に少し混乱していた。


「フェイト・アーウェルンクスだと。 まさか完全なる世界の最高幹部の生き残りか!?」

それはイスタンブールの魔法協会から舞い込んだ一つの情報が始まりだった。

身元不明の魔法使いの少年がイスタンブールの魔法協会に潜り込んで、関西呪術協会へ潜り込もうと暗夜していたとの情報が急遽関東魔法協会情報部に入ったのだ。

そのあまりに驚きの情報に担当幹部は再度情報の確認を指示したがどうやら事実らしく、フェイト・アーウェルンクスはイスタンブールの魔法協会に事態が露見した途端姿を消したらしい。


「厄介なことになったのう」

完全なる世界の残党が生き残っており、それもかつてナギ達を散々苦しめたアーウェルンクスが関西に潜入しようとしていた事実に、報告を聞いた近右衛門は思わず冷や汗が流れるのを抑えきれなかった。


「しかしよく発見したものだな」

「どうもイスタンブールの魔法協会に出所不明の情報が入ったらしく、向こうで調べたら本当に居たらしい」

緊急で集まれる魔法協会幹部が急遽近右衛門の元に集まり情報収集や今後の対応を検討していたが、今回の件は些か不可解な点が多い。

フェイト・アーウェルンクスを名乗る者が大戦後の一時期活動していたのは、各国魔法協会の情報当局は知っている。

彼が大戦後にナギ・スプリングフィールド達と戦っていたのは、各国魔法協会の情報当局の間では周知の事実なのだ。

ただナギが姿を消して以降、彼らも姿を現してない。

そんなフェイトが見つかったとの情報に、各国魔法協会やメガロメセンブリアでは驚きの声が広がっていた。


「狙いはうちだろうな……」

集まった幹部達の顔色は一応に悪く空気が重い。

完全なる世界の残党が欲するモノは全て麻帆良にあるのだ。

現状では目的は不明だが、どう考えても最終的な狙いは世界樹の地下に封印された創造主とアスナ姫であろう。


「捜索させるか?」

「捜索してどうなる? 高畑君でも手に負えんだろうし、数を集めればいい訳でもない。 下手に手を出せば収拾がつかなくなるぞ」

無言のまま目を閉じる近右衛門の前で幹部達は対応を話し合うが、特別有効な方法など存在しない。

まあ関西に潜入される前に露見したのは不幸中の幸いだが、フェイトの行動を情報部で全く掴めてなかったのは問題だった。


「情報収集の問題は任せる。 あと西に特使を送って今後の対応を協議するべきじゃな」

神出鬼没であるフェイトへの対応に苦慮しながらも対策を検討し始める近右衛門と幹部達だが、この問題に関しては関西呪術協会との協力体制の構築が必要だと考え早急に協議に入ることを決める。

実際今回狙われた関西呪術協会でも対策に追われており、この問題に関して関東との情報の統一や対策の協力は必要不可欠だとの見方が大勢だった。

元々関西呪術協会はあまり対外的な交流はなく、イスタンブールなどの古い付き合いがある一部の魔法協会以外は交流すらない。

閉鎖的で身内の情報を秘匿することには長けてる関西呪術協会も、対外的な情報収集能力という点では致命的に劣っていたのだ。

元々関東と関西は幹部クラスでは長い月日を重ねて協力出来る信頼関係を築いて来たし、今回は問題が問題なだけに一歩踏み込んで直接協力を始めることになる。

二十年前の魔法世界の戦争であれだけ暗躍した完全なる世界に狙われたとなると、関東も関西も動かざる追えなかった。



さて今回の騒動についてイスタンブールに情報を流した者だが、言わずとも理解してるだろうが土偶羅である。

フェイトの排除には幾つかの選択肢があったが、今回土偶羅が選んだのは間接的に排除する方法だったらしい。



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