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平和な日常~秋~

「俺、時間移動はもうお腹いっぱいなんだけどな」

麻帆良の街がゆっくりと秋に向かうその日の夜、横島は店の厨房で翌日の仕込みをしながら土偶羅の報告を聞いていた。

ようやく超鈴音に関する調査が終わったようである。


「時間移動に制限があるのが不幸中の幸いだったな」

横島も薄々気付いてはいたが超鈴音が未来から来た者だと確定すると、心底めんどくさそうな表情をしていた。

土偶羅はとりあえず現状では時間移動が出来ないと知り最悪の事態は免れたと言うが、横島は嫌な予感しかしない。


「それにしてもまたあの色男の血筋か。 あいつ呪われてんじゃねえのか?」

今回超の素性が判明したことで分かったことも多く、その一つに超の世界の過去の歴史も土偶羅は当然調べていた。

それは横島や超が居ない麻帆良と世界の歴史なのだが、とある一人の少年が歴史の鍵を握っていると言っても過言ではない。


「英雄かテロリストかを地で行くようなガキには見えんけどな」

今回の土偶羅の未来視調査は完璧だった。

超の未来や時間移動の根本の原因である平行世界の過去まで精密調査した結果、ネギ・スプリングフィールドの行動により世界の未来が微妙に変わるという真実である。

どうやら神魔が直接介入しないこの世界は、人間の行動が世界に与える影響が横島の世界よりも数段大きいようなのだ。

千年や万年単位では似たような歴史になっても、数十年から数百年程度なら結構簡単に変わるらしい。


「英雄か世紀のテロリストかは後世の人間が勝手に判断しただけだからな。 本人は純粋に世界を救おうとしたのだろう」

「純粋だからこそ厄介だなぁ。 美神さんとこに一ヶ月くらい居れば、ちょうどよく普通の人間になりそうだ」

ネギ・スプリングフィールドは良くも悪くも歴史に名を残している。

時には世界を救った英雄として、時には世界を混乱させた世紀のテロリストとして……。

その行動は純粋であり私利私欲が少ないが、故にネギの行動は彼本人の思いもしない結末を導き出すことも多かった。


「そんな冗談を言ってる場合か?」

「分かってるけどさ……」

今までも土偶羅の報告は頭の痛い報告ばかりだったが、今回は横島も思わず現実逃避したくなる報告だった。

正直ネギのような人間は令子に任せるのが一番だと思うのだ。


「まあいい。 必要な計画と準備はわしが進めておく。 お前は必要な時に決断するだけだ」

「それが一番難しいんだよな~」

結局土偶羅は今回判明した情報を得ても今までと同じく、必要な計画と準備を進めていくだけである。

横島はそれらの選択肢から選び決めるだけなのだが、問題が世界規模になるとそれも簡単ではない。

しかも次元を越えて平行未来まで関わるとなると、横島も厄介過ぎて嫌になってしまう。


「とりあえずこのフェイトを名乗るガキが木乃香ちゃんの実家に関わるのはまずいな。 下手に動かれると厄介だ」

今回判明した情報は膨大であり情報の分析は今後も必要だが、現状で決断すべきことは関西呪術協会に潜り込もうとしてるフェイトへの対応だった。

彼の真の目的は恐らくアスナ姫の捜索と、世界樹の地下に居る完全なる世界の創造主の救出だろう。

平行世界で明日菜達の修学旅行での騒動も、恐らくは創造主の救出に関連する目的ではと土偶羅は考察している。

まあ横島としてはフェイトの目的が何であれ、現状で関西で問題を起こされるのは迷惑でしかない。

メガロと麻帆良の関係もネギの去就以来微妙だし、今また関西と麻帆良が争うような問題が起きれば近右衛門がまた苦労するのは目に見えていた。

超鈴音やネギの問題は今後も検討が必要だが、現状で横島が決断したのは関西からのフェイトの排除だった。



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