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平和な日常~秋~

「おじいちゃん、こんにちは」

「おや、今日もお揃いでお散歩かい?」

散歩に出たタマモと猫達が訪れたのは、麻帆良では珍しい純和風の家と庭がある老人の家だった。

決して広くはない家に住むその老人だが、昔から猫達にご飯をあげたり病院に連れて行ってやったりとしていたほど猫好きらしい。

タマモと猫達が庭から入って行き挨拶すると、老人は優しい笑顔で挨拶を返す。


「うん、あきをさがしにきたの」

優しい笑顔の老人に猫達は擦り寄っていき、タマモもまた笑顔で話しを始める。

突然庭からやって来たタマモ達に嫌な顔一つしないこの老人は猫達の好きなようにさせており、猫達は自由気ままに庭を散歩していた。

基本的にタマモが猫達と寄り道するのは、日頃から猫に優しい人達ばかりのようだ。


「そうかい。 秋は冬の準備をする時期じゃから、木々の葉の色が変わるじゃろう。 昔は人も冬の準備をしたもんなんじゃよ」

「ふゆのじゅんび?」

「そうじゃよ。 冬は作物が育ちにくいから、昔は漬物を付けたりして保存食を準備したりしたもんじゃ」

老人は何も知らないタマモに嫌な顔一つせずに昔の話を語り説明していく。

実際にタマモがそれを理解出来ないような時もあったが、老人はいずれ理解出来るからと笑っているだけである。


「おつけものはおいしい。 このまえ、わたしも手伝ったんだよ」

冬の準備については季節をあまり理解してないタマモには理解出来なかったらしいが、漬物が美味しいのは理解しているらしい。

木乃香から貰ったお土産の話や、先日横島が漬物を漬けるのを手伝った話をタマモは楽しそうに語っていた。


「またね」

「そうじゃ、これを持っていきなさい。 友人が送ってくれたんじゃが、老人の一人暮らしには多くてのう」

そのまましばらくおしゃべりするタマモと老人だが、猫達が散歩を再開するように歩み寄るとタマモは老人に別れの挨拶をして庭を後にする。

帰り際に老人からサツマイモを何本か貰ったタマモは、今度お返しすることを約束して散歩を再開した。

夏以降タマモは猫達と一緒に時々散歩しているが、散歩ついでにおやつをご馳走になったりおすそ分けを貰ったりすることはたまにある。

相手は以前タマモが東京や海に行った時に、お土産をあげた人もいるしそうでない人もいる。

ただ今日はタマモは何も持って来てないが、タマモ自身もおすそ分けやらお返しを持って散歩に行くことも時々あった。

最初の頃はタマモと一緒に横島もお礼に行ったりもしたが、今日の老人のようにすでに仲良くなるとタマモが自分で考えてお返しやお土産を渡している。

横島としては貰った相手の名前を聞き顔を合わせた時にはお礼を言うが、基本的にはタマモがお返ししたいと言えば何か用意してやるくらいだった。

この辺りの対応の良し悪しは判断が分かれるだろうが、どうもタマモと猫達はいい人を選んで遊びに行ってるらしく問題にはなってない。

何はともあれ今日もタマモと猫達の散歩は元気に続いていった。



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