どれだけ時間が過ぎたかわからないが、話が終わる頃には重苦しい空気が辺りを支配している


「よく人は話せばわかると言いますが、わかり合えないこともあるのが現実でしょう。　美神さんやおキヌちゃんが求める横島さんはもう居ないです。　どちらがいいとか悪いとかでは無いですし、別々の未来を求めているのですから仕方ないと思います」

令子やおキヌと横島の関係を、魔鈴は静かに語っていた

魔鈴としては好きでは無いし言いたいこともあるのだが、客観的に見ると求める未来が違い過ぎるのだと思う


「出来れば同情とか慰めではなく、今の横島さんをそのまま見てあげてほしいです。　横島さんはルシオラさんの復活を諦めてません。　今後の横島さんと私の人生を賭けて、ルシオラさんの復活を必ず実現させます。　どうか過去ではなく、今の横島さんを感じて下さい」

最後に魔鈴はそう話して深く頭を下げた


霊能者でも、英雄でも、悲劇の犠牲者でもなく、素顔の横島をそのまま見てほしい

それは一番最初に横島を普通の人間として見た、魔鈴ならではの強い想いである

同情や慰めではなく、共に生きる仲間であってほしいという願いが篭った言葉であった



話を聞いたメンバーのうち、初めて真実を知る者達はあまりの真実に放心状態である

聞いた話をどう理解して考えればいいかすらわからない


そしてあの戦いを共に戦った仲間達もまた、知らなかった横島の裏側に言葉に出来ない感情を抱えていた


「私は冷めた料理を温め直しますので、どんどん召し上がって下さい。　横島さんとルシオラさんの新しい人生の始まりもお祝いして……」

気持ちを切り替えた魔鈴は笑顔で厨房に戻っていく


「拙者も手伝うでござる！」

涙でぐしゃぐしゃの顔を拭い、シロは笑顔を作り魔鈴に続いた

正直、涙を止めるのがやっとなシロだが、自分は弟子として出来ることをしたいと言う一心である

考えるのはいつでも出来る、まずはやるべきことをしようというシロの真っすぐな強さであった


「ほら、あんた達も顔洗って来て落ち着きなさい。　横島にそんな顔見せる気なの？」

俯いたまま声を殺して泣く小鳩と愛子と、隠すこと無く声をあげて泣く冥子に声をかけたのはやはりエミである

「グス…　でも～　エミちゃん～　グス…」

「冥子…　気持ちはわかるけど、横島が未来を見てるなら私達が泣くのはダメなワケ」


困ったように戸惑いの表情を浮かべるエミは、泣き止まない冥子をなんとか慰めていた

正直、自分のキャラじゃない言葉や行動に戸惑いを隠せないが、あの戦いを経験した自分がしなくてはならないと理解している

そしてそんなエミの言葉を理解したのか、冥子達は顔を洗いに行った


「近畿君もピートもいろいろ思うことはあると思うけど、急いで考える必要は無いワケ。　今度、横島と本音でゆっくり話しなさい」

残る銀一とピートに軽くアドバイスをしたエミは、二人に酒を飲ませていく



一方神魔達とカオスとマリアは、見た目は冷静に受け止めていた

それぞれ思うところはあるのだろうが、この場所で語るつもりは無いようだ