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平和な日常~夏~2

「疲れた~」

接待の客達が帰ると横島は今までの反動が来たかのようにダラけてしまう。

明日菜やさよは滅多に見れない真面目な横島に目を白黒させていたが、いつもの横島に戻るとどこかホッとしたような笑みを浮かべる。


「なんか世界が違いましたね」

「私は真面目な横島さんが一番ビックリしたわ」

ダラけた横島の隣ではタマモが横島の頭を撫でている。

恐らく労っているのだろうが、さよと明日菜はそんな二人についつい笑ってしまう。

二人にとって今回は大人の世界を垣間見ただけに、楽しさや驚きなどいろいろあったらしい。


「今回の料理は幾らなんです?」

「お酒は抜きで料理が一人一万五千円で頼まれてるよ。 まあ都内の一流店ならプラス一万は軽くするだろうけどな」

疲れてグッタリとする横島に明日菜は今回の料金を聞くが、その値段にはやはり驚いてしまう。

今回は赤字を出すほどではないが、正直儲けもあまりなかった。

今回の食材は基本的に雪広グループから仕入れており、フォアグラやトリフなどフランス料理の定番食材ももちろん使用している。

食材に関しては雪広グループの接待なので同社の食材を使うべきだと仕入れたのだが、本業のレストランならば同じ麻帆良市内の店でさえ何割かは割高になるだろう。

まあこの値段に関しては雪広グループ側も、横島に対してはグループ企業と同じ扱いで食材などを安く融通してくれているのでさほど割引し過ぎた訳ではない。

というか今回の食材も何のツテもない横島が一から仕入れをすると考えると、かなり労力や時間がかかるし高品質な食材を揃えるのは楽ではない。

値段・質・量ともに細かく対応してくれる、雪広グループ側への配慮は当然必要だった。


「腹減ったろ。 余った料理もあるし今日は店閉めて飯にしよう」

しばらくダラけていた横島だったが、今日は夕食がまだである。

料理は不測の事態を考慮して多少多めに作っており、横島達四人の夕食にはちょうどよかった。

店内はちょうど客も途絶えたことから店を閉めて、いつもより豪華な夕食にすることになる。


「美味しいのは当然ですけれど、値段を聞くと少し複雑な気持ちになりますね」

「余り物だから気にするなって。 一応二~三人前は多めに仕込まんとダメだから余ったんだよ」

料理は先程のフランス料理と同じだったが、今は身内の夕食なのでさほど気取った雰囲気ではない。

横島はついでにタマモとさよの二人にテーブルマナーを教えているが、明日菜は気楽に箸で食べていたりする。

そんな明日菜は値段を忘れられずに自分のバイト代と比べて少し微妙な気持ちになってはいるが、美味しいのは確かで食事自体は楽しく進んでいく。

ちなみに明日菜とさよはフランス人は毎日こんな料理を食べているのかと勘違いをしてしまい、横島が違うと説明するなどあったが先程の緊張感などカケラもないような楽しい夕食になっていた。


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