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母からの伝言

「美神さん大丈夫っすかね?」

「おキヌちゃんも居ますし大丈夫ですよ。」

その後小竜姫は幼ないれーこを令子本人とおキヌに任せて帰り横島とついでに雪之丞も連れてアパートに帰っていた。

横島同様に自炊なんて出来るわけがない雪之丞は美神事務所や小竜姫が夕食を食べさせることが多く、基本的に遠慮をしないのでこの日も普通にアパートに着いてきて一緒に夕食を食べている。


「しかし時間移動か。 使いこなせたら何でもありだな。」

「そう良いことばかりではないですよ。 魔族の中には時間移動能力者を狙う者が居ると噂に聞きますし、時間移動も決して万能ではありません。 変えれることと変えれないことがありますし、何より失敗すると二度と帰れぬでしょうから。」

今夜は鍋物らしく鶏のつみれ鍋であり横島と雪之丞は競うようにガツガツと食べつつも、雪之丞はこの日初めて実在すると知った時間移動能力について興味があるらしく口を開く。

強くなることとは直接は関係ないが霊能者でなくとも時間移動は誰もが一度は夢見ることであり、雪之丞もまた令子同様に二度と会えぬ母に会えればと思うのかもしれない。

ただ小竜姫は時間移動に多少思うところがあるので少し厳しい表情で時間移動の欠点を語るが、可愛らしいひよこがプリントされたエプロン姿なためイマイチ説得力に欠けていた。


「そして恐らく彼女は……。」

そんな小竜姫であるが幼いれーこが来て半日以上過ぎた現状をいろいろ考えた結果これが魔族ハーピーの事件であるとほぼ確信していて、美智恵は令子が魔族に狙われてると警告を与える為に時を越えてわざわざ未来に来たのではと疑い始めている。

未来で見た報告書でもハーピーは暗殺に特化した能力はあったものの魔族としてはメドーサに遠く及ばないと書かれていたのだ。

あくまで時間移動能力者の捜索と殺害して魂を持ち帰ることのみが彼女の仕事だったはずなのだ。


「あのときの彼女の年齢からすると……。」

ただ未来の報告書には美神美智恵が何度時間を越えて何をしたのかまで書かれてなく、そもそも時間を越えた先はその時間の神族が居るので小竜姫達には管轄外であり過去や未来での行動まで調べられなかったという事情がある。

当時はアシュタロスの一件が片付いたことで小竜姫自身も安堵して深く追求しなかったが、今回過去から来た美智恵とアシュタロス戦の時の美智恵までおよそ十年の時間があり美智恵がその間に動いていたことはほぼ間違いない。

そしてもしかすれば今も隠れているこの時代の美智恵もまた過去の美智恵と協力してるかもしれないし、もしかしたらこの時代の美智恵がアシュタロス関連の情報を過去の美智恵に流した可能性すらある。

なんというか卵が先か鶏が先かという感じになるがどう考えても美神美智恵は危険な存在であることに変わりはない。


「あの、小竜姫様?」

「ああ、すいません。 細かく考え出したらいろいろ気になり始めたもので。 さあ、そろそろシメにしますか。」

横島と雪之丞の前で小竜姫はしばしの間、深い思考の中に埋没していたが心配そうな横島に声をかけられると我に帰り鍋のシメにと雑炊を作り始める。

小竜姫としては令子もそしてルシオラ達三姉妹も助けたいと考えているし、美智恵の存在がその助けになればいいが彼女の性格からして邪魔になる可能性も否定できない。

とりあえず今は令子がハーピーをどうするか見守るしか出来ないが。



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