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平和な日常~夏~2

「おじいちゃん、ただいま」

そこはロンドンの郊外にある古びたアパートの一室だった。

メルディアナを離れたネギと祖父の二人は、現在そこに部屋を借りて住んでいる。

暴走癖があり日常生活でもすぐに魔法を使おうとするネギは祖父に魔法を禁止されてはいるが、それでも始めての都会の生活をそれなりに楽しんでいた。



実はメルディアナを離れて以降二人はしばらくホテル暮らしをしていたが、各国魔法協会やメガロの監視がきつく自由な旅行さえままならない現状だった。

祖父は長年の働きによりかなり資産があるので生活には困らないが、ネギを落ち着いて育成するにはホテルではダメだとロンドンで部屋を借りたようである。

そんな二人だが基本的に祖父は魔法関連は暴走する魔法のコントロールの基礎を教える以外は一切教えてなかった。

ネギ本人は戦闘に関する魔法の修行がしたいらしいが、祖父がそれを許してない。

そしてほとんどの時間はロンドンを始めとしたイギリス国内の観光や、魔法を一切使わない普通のスポーツなどに費やされている。

日々の生活も一緒に料理や掃除をするなど、ごく普通の家族と同じ生活だった。

実際ネギは魔法の修行も満足にさせて貰えない現状には不満も感じてはいたが、魔法と関係ない一般社会はネギにとっては新鮮であり好奇心を刺激することも多く楽しかったのも事実である。

心の奥底に抱えた闇とそれから来る焦りや力を求める欲求も強まってはいるが、祖父はそんなネギにあえて普通の子供としての生活を経験させることが必要だと考えているらしい。

これは何より壊滅的である対人コミュニケーションを少しでも向上させたいと考える祖父の苦肉の策であった。


「ネギや、そろそろお茶にしようか」

メルディアナを離れた祖父は、数十年ぶりの穏やかで平和な日々を素直に楽しんでいる。

人生のほとんどを魔法に捧げた彼だが、成功者と呼べるほどの地位や名声と引き換えに多くの苦難もあった。

晩年は息子であるナギの問題に振り回されたり、地球側の魔法使いとメガロメセンブリアとの掛橋として活躍したりもしたが、結局誰も孫の普通の幸せの手助けすらしてくれない。

そんな冷たい現実が彼を過去からふっ切らせるには十分だった。

今まで立場上決して口には出さなかったが、魔法世界の為に人生を賭けた息子や嫁に対してのメガロ側の仕打ちは親としては決して許せるものではない。

それにも関わらず魔法協会の為に働いていたのは、多くの仲間や二つの世界のためである。

最終的に仲間にまで見捨てられた状況になったが、祖父としては今まで背負っていた重荷が消え去り逆に清々する部分もあった。

純粋に孫の幸せと未来を考えれる今の生活が彼は好きであり、もっと早くこうするべきだったと後悔もしている。


孫を息子の二の舞には絶対にしたくない

祖父はそんな想いを抱えたまま穏やかで平和な日々を生きていた。



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