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平和な日常~夏~2

一方この日の麻帆良では、超鈴音が麻帆良市内の超包子各店を周り営業状況の確認をしていた。

八月に入って前々から予定していた超包子の複数の新店舗開店を実現した超だったが、開店した各店の状況確認や各種指導などでこの日も忙しい。

加えて二年後の計画の日までにやるべきことが山積みである彼女には、夏休みなどないに等しいようである。


(今頃みんなは海で騒いでる頃カ……)

額の汗を拭った超は仕事の合間に一息つくが、海で騒いでるだろうクラスメートを思い出すと少しだけ羨ましく感じてしまう。

信念を持って生きる超鈴音だが、彼女もまた14才の中学生であることに変わりはない。

今を楽しみ未来に希望を持つクラスメートが羨ましくないはずはなかった。


(今更なことネ……)

ほんの一瞬だが自分もクラスメートと同じく生きれたらどれだけ幸せだろうと考えてしまった超は、自分の弱さを戒めるように自身の行きた未来やこれから起こりうる可能性を思い出す。


「変えてみせるヨ。 例えどれだけ犠牲を払っても……」

穏やかで優しさに包まれた麻帆良が超は本当に好きだった。

しかしこれから起こりうる歴史を変えるには、それを犠牲にしなければならないかもしれない。

その現実が超の心に深く突き刺さる。

長い歴史が積み重ねて来た世界の歪みと行く末を背負うには、超はあまりに幼く若かった。



「マスター、お茶が入りました」

同じ頃エヴァンジェリンは、自宅のリビングで何をする訳でもなく窓から見える空を見つめていた。

先程までは魔法球の中で数週間連続で自身の呪いについて研究していたが、久しぶりに麻帆良に戻って来ていたのだ。

茶々丸はそんなエヴァに冷たいお茶と前日に横島の店で買った水菓子を持っていく。


「あの……、マスターは呪いが解けたら麻帆良を出て行かれるのですか?」

ほっとくといつまでも無言のままのエヴァに、茶々丸は少し不安そうに以前から来になっていたことを尋ねる。

エヴァが呪いの研究をすることは当然だし麻帆良から出たいと考えてるのも理解してる茶々丸だが、彼女はその後エヴァがどうするのかと自分がどうなるのか気になっていた。

ガイノイドである茶々丸はエヴァの命令には従うようにプログラムされているが、横島の影響もあってか感情が育ちつつある茶々丸はエヴァの今後や自分がどうなるのか少し不安になってるようだ。

自分がガイノイドだと自覚がある茶々丸は、不要だと言われると廃棄処分になっても仕方ないと考えている。

理論的には何の問題もないと理解してるが、茶々丸は何故か未来に恐怖を感じている自分が少し不思議だった。


「茶々丸……お前……」

ガイノイドである茶々丸が見せる不安や戸惑いを感じたエヴァは、素直に驚き言葉が続かなかった。

それが本当にプログラムなのか、エヴァは微かな疑問を感じたようである。


「何も決めてない。 お前のこともあるしな」

驚きと疑問が頭を過ぎったエヴァは、不安そうな茶々丸に一言言葉をかけると再び無言になってしまう。

その言葉にホッとしたような茶々丸を見てエヴァは静かに空を見つめていた。



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