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新しき絆

百合子は静かに手を合わせて祈っている

横島はそんな母親を静かに見つめていた


(まさか… お袋とここに来るとはな…)

横島は祈る百合子を見て不思議な気持ちだった…


その時…

横島は見てしまった…

祈る百合子が静かに泣いているのを…


(お袋…)


横島は百合子の優しさと気持ちを感じていた

魔族のルシオラに、当たり前のように手を合わせて祈っている…

そして、涙を流していた

その事実が横島の心にしっかり残った


その後…

横島と百合子は無言のままアパートに帰った


夜、横島と百合子は布団を並べて横になっていた


「忠夫… ルシオラさんってどんな人だったの?」

お互い天井を見つめたまま、百合子が突然聞いてきた


「あいつは… とても綺麗だったよ。 強く… 真っ直ぐで… 優しい… 本当に俺なんかにはもったいないくらいの女だった…」

横島は愛おしそうに…

そして悲しそうに話した


「そうかい…」


しばらくまた無言の時間が続いた
「お袋… なんでルシオラの墓なんか行きたかったんだ?」

「お前の恋人だった人… そして命の恩人なんだろ? 墓参りくらい行きたいじゃないか…」

二人は静かに話していた…

「ありがとう…… お袋…」

横島は静かに呟いた…


百合子は、そんな息子の言葉に内心驚いていた

(ルシオラさん… あなたのおかげで、息子は立派な男になったわ… ただ… 生きて会いたかった…)

百合子は本当に悔しかった

息子を男にした女性…

息子と幸せな家庭を築いたかもしれないのに…


横島と百合子

それぞれ想いを抱えながらその夜は眠りについた


次の日、横島朝から学校に向かった


百合子は横島を送り出した後出掛けた


百合子がたどり着いた場所は、昨日夕食を食べた魔鈴の店だった…


「ごめんください…」

まだ開店前の店を開けて百合子は声をかけた

「はーい、」

魔鈴は忙しそうに厨房から出て来た


「あら… 横島さんのお母さん。 昨日はありがとうございました」

魔鈴は少し驚いて笑顔で挨拶した

「朝早くごめんね。 ちょっと話したいんだけど… いいかしら?」

百合子は真剣な表情で話した


「はい、どうぞ…」

魔鈴は百合子を店内に入れて、紅茶を出した


魔鈴と百合子は向かい合って座った

「魔鈴さん… この一年忠夫がお世話になりました。」

百合子は突然そう話して深く頭を下げた

「いえ… 私も横島さんには危ないとこ助けてもらいましたから…」

魔鈴は突然百合子が頭を下げたのに驚いて、困ったように話した


魔鈴は昨日のタマモの件といい…

百合子が、かなり調べたと思った

自分が横島と仲がいいのは、令子もしらない…

その事実を調べたとは…

魔鈴は百合子の凄さを改めて理解していた


百合子と魔鈴…


二人の間に微妙な空気が流れていた

嫌悪な訳ではない

ただ、お互い遠慮してる感じはあった


「あなたから見て忠夫はどう?」

百合子は少しつらそうに聞いた


「……横島さんは迷い、苦しんでます。 しかし… 前に進もうと必死に頑張ってます」 
  
魔鈴は横島を想い、つらそうに話した


「そう…」

百合子は予想していたとはいえ、厳しい現実に言葉も無かった…


「私ね… 一年少し前にも来日したの… 忠夫をナルニアに連れて行こうと思ってね。 その時、美神令子さんにも会ったわ…」


百合子は後悔の表情をしていた

「……」

魔鈴は静かに聞いていた

「前の忠夫は子供でね… 落ち着きが無くて、セクハラも酷かったわ。 その忠夫を令子さんは上手く捕まえていたと思ったわ」

百合子はあの時を思い出しながら話していた…
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