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母からの伝言

「なんだ隠し子か?」

「そんな訳ないでしょ!」

一方美神事務所ではお昼になり雪之丞が仕事に来ると幼いれーこを見て隠し子かと疑うも即座に否定されていた。

年齢的にも微妙にあり得ることから疑ったらしいが、かつて同じ疑いを持った横島以上に女心や女性を知らぬ雪之丞は令子に過去彼氏すら居たことがないとは気付かないようである。


「ふーん、時間移動ね。」

「今日の仕事はキャンセルよ。 あんたもとりあえず事務所待機ね。 なんか厄介なことになりそうだし。」

来て早々でおキヌが作ったご飯をガツガツと食べつつ事情を聞く雪之丞であるが、彼もまた令子同様に子供が苦手らしく話を聞き今日の仕事がキャンセルすると言われると少し微妙な表情をした。

実は小竜姫と令子で相談していつ美智恵が来てもいいように事務所待機することにしたらしいが、小竜姫も令子もなんとなく厄介事の予感が働いたらしく事務所で大人しくしてることにしたらしい。


「別に構わんが何するかな。」

「ちょうどいいからこれでも読んで覚えなさい。」

食後雪之丞は事務所待機については素直に従ったものの外は雨でありやるとすれば室内での修行になるが、何の修行をしようかと考え始めた雪之丞に令子は何冊かの本を渡して読むようにと言いつける。

それはかつて令子が使っていた六道女学院の霊能科の教科書に、見習い用の霊障マニュアルやオカルトアイテム図鑑に妖怪大全集なんかの基礎的なGSの知識として必要な本ばかりであった。


「こんなに必要なのか?」

「それは見習いに最低限必要な知識よ。 言っておくけど一流になりたいなら何でもかんでも力だけで解決出来るなんて思わないことね。 別に今のスタイルを変える必要はないけど他のやり方とか基礎的な知識くらい覚えないとやってけないわよ。」

目の前に置かれた本の山に雪之丞はあまり気が進まないらしく若干嫌そうな表情を見せるも、令子に至極当たり前のことを指摘されるとぐうの音もでない。

もちろん強くなることが最優先ではあるが、GSになる以上何も考え無しに戦うだけでは無理なのは流石に理解している。


「別に強制はしないわよ。 あんたの実力なら今のままでもそこそこやれるし、ある程度経験積んで小竜姫様が責任持つなら見習い卒業させるわ。 でも中途半端になるのは確実だけど。」

「やらないとは言ってない。」

正直あまり気が進まないと顔に書いてある雪之丞であるが令子は嫌ならやらなくていいとあっさり突き放すも、中途半端になると強く言い切る辺り雪之丞の将来を最低限でも気にかけているのは確かだった。

まあ令子としてはこのままでも事務所で使う分には問題はないし、雪之丞の実力ならば万が一問題を起こした際に小竜姫が責任を取るならば経験さえ積めば見習いは卒業させてもいいと思っている。

ただ令子からみて人間社会やGSに疎い小竜姫が自分に期待してるのはGSとしての教育や社会人としての教育だと理解もしていた。

雪之丞のような実力はあるが霊能の修行ばかりしていて人間関係や社会人として未熟な霊能者が、依頼人に騙されて払う必要のない霊障の被害の賠償なんかを払わねばならない契約を結ばされて借金を背負わされたり、はたまた事務所で雇った従業員にお金を持ち逃げされたなんて話はよくあることである。

他にも一匹狼のようなタイプでは派閥が力を持つオカルト業界では同業のGSに騙されて格安で難易度の高い依頼をやらされたりと何かと被害に合いやすい。

まあ雪之丞の場合は形式的には令子の弟子になるのであからさまに同業者に騙されることはないだろうが。



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