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平和な日常~夏~2

それから数日が過ぎて暦が変わり八月になった頃。

庭の植物は連日の猛暑に負けずに青々と育っていた。

夏野菜の収穫も連日結構な量が収穫されており、こちらは横島達の食卓を彩っている。

ここに来た当初、花や野菜を植えた横島だが特に深い意図があった訳ではなくなんとなく植えただけであった。

特に野菜なんかは比較的素人にも簡単だと言われる物を植えており、失敗しても自分で食べるならいいかと気楽な気持ちだったのだ。

それがいざ収穫の季節になると一人ではなくなったのは嬉しい誤算だろう。

夏休みに入ってさよを実体化して以降は三人で食事を取ることになったので、夏野菜は朝食のおかずになっている。

朝の日課の庭の水やりや草むしりなども、最近は二人が手伝ってくれるので三人でしていた。

加えて茶々丸も相変わらず猫達に会いに来るので、時には茶々丸も手伝ってくれるなど賑やかな朝が多い。

そんな庭の手入れが終わると店の開店準備を始める横島だったが、タマモとさよはこちらも手伝ってくれてる。

タマモに関しては木乃香達の影響で少し前から手伝いをしているが、さよが実体化以降はさよも積極的に加わっていた。

さよに関しては普通に物に触れられること自体が嬉しいようで、何事も本当に楽しそうだった。

庭の手入れが終われば横島は基本的に料理の仕込みを始めるが、タマモとさよはその間に店の外観や周辺の掃除などをする。

まだ朝早い時間だが周辺の店の人達も同じような時間に掃除をしており、タマモとさよはご近所さんとも笑顔で挨拶するなど良好な関係らしい。



「うわ~、今日はウナギですか。 そういえば今日は土用丑の日ですもんね」

そんな朝の掃除を終えて厨房に入って来たさよとタマモが見たモノはウナギを捌く横島だった。

実はこの日は土用丑の日であり、昨夜はテレビなどでもウナギ屋の番組が入っていたのをさよは見ていたらしい。


「この前の丑の日にウナギやらんかったら、期待してた客が結構居てがっかりされたからな~ うちは喫茶店なのにさ」

ウナギを見て興味津々なタマモと何故か嬉しそうなさよに、横島は若干苦笑いを浮かべて訳を話すが結局は何人かの常連に頼まれただけだった。

今年は土用丑の日が二回あって七月下旬にも土用丑の日があり横島はウナギを出さなかったのだが、てっきり横島ならばウナギを出すと期待していた客が随分いたらしくがっかりされていたのだ。

ただ横島の言い分としてはウナギの蒲焼きはタレがなかなか難しく、毎日蒲焼きを焼くような専門店の秘伝のタレは流石に通常の調理法だけでは簡単には真似できない。

そんな訳でウナギを出さなかったのだが、客に期待されて頼まれた以上断る訳にはいかなかった。

そもそも横島本人は相変わらず普通の喫茶店のつもりでいるが、客のほとんどは普通の喫茶店だとは思ってない。

麻帆良学園の美食系サークルの中には横島の店を喫茶店ではなくレストランに分類してる者達もいる。

スイーツの噂を聞きつけて来た人などはケーキ屋だと勘違いしていたこともよくあり、純粋な喫茶店だと考えてる者はほとんどいなかった。

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