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平和な日常~夏~2

「偶然とは怖いもんじゃのう」

以前にも説明したが豪徳寺は見た目とは違い非常にいい人であり、学園側にも非常に協力的な人間だった。

正直『気』を体得したのが彼でよかったと言うのが近右衛門の認識である。

ただそれが麻帆良でも有名な武道家である古菲に伝わったのは運が悪いというしかない。

古菲はその可愛らしい容姿に似合わぬ強さから、格闘技系の男達にカルト的な人気があるのだ。

日頃いろいろな格闘技をする人から勝負を挑まれるが、古菲に勝てば告白したいと考えてる者もそれなりに存在していたりする。

そんな古菲が『気』を体得すれば騒ぎになることは明らかだった。


「案外必然だったりして……」

近右衛門のため息混じりの呟きに、横島がふと漏らした一言に近右衛門は少し考え込むような表情に変わる。

古菲の場合は遅かれ早かれ『気』に気付く可能性があったのは近右衛門も理解していた。

そもそも2-Aは木乃香や明日菜を秘匿し守るという意味から、刹那やエヴァや龍宮を近右衛門が一緒のクラスにした過去がある。

加えて魔法協会と無関係ながら楓が忍者の末裔なのも近右衛門は最初から知っていた。

現代ではすでにほとんど交流はないが、昔は関西呪術協会と忍者は協力していた時代もあるのだ。

はっきり言えば近右衛門が知らないのはサジの正体くらいだった。

そんなクラスに古菲が入ったのは本当な偶然なのだが、ある意味古菲はいつどこで裏に関わっても不思議ではない環境なのは確かである。


「君が言うと冗談に聞こえんわい」

横島がぽつりと漏らした一言に、近右衛門は何故か背筋に冷たいモノが流れた気がした。

正直近右衛門にとって横島は、何故か気心を許してしまう不思議な存在感がある男である。

過去や日頃の行動には何の不審もなく違和感もないが、どこか底が知れない不気味さも僅かに感じていた。

まるで嘘が付けないような横島も魔法の秘匿はきちんとしてるのだから、裏の横島があっても不思議ではないのは理解している。


「おっ、どうした?」

そんな近右衛門の思考を止めたのは、偶然店に入って来たタマモだった。

金魚の絵を描いたタマモが絵を見て欲しくてやって来たのだが、そんなタマモを見る横島の目を見て近右衛門はホッとする。

横島には何か裏がある可能性もあるが、現状で横島がタマモや木乃香達をいかに優しく見守ってるかは近右衛門も理解していた。

過去には傷の一つや二つはありそうだと感じてはいるが、今回の件でも明らかになったように現状では横島の存在が木乃香や明日菜のプラスになってるのは確かなのだ。


(わしもまだ運が残っていたのかも知れんのう)

横島という何処か得体の知れない存在が自分や孫達に吉報をもたらす存在かもしれないと、冗談めいた考えをしてしまった近右衛門は思わず自分の考えのおかしさに笑みを浮かべていた。

実際にはそこまで重要な存在だとは全く思ってなく、何処にでもいる一般の魔法関係者だと考えている。

横島の存在がそんな存在であればいいと勝手な願いを持ってしまった自分に、近右衛門は思わず笑ってしまったようだ。




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