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それぞれの想い

「あなたも妙神山に行ったんですの…?」

あまり過去を語らない雪之丞だけに、かおりは知らなかったようである


「ああ、前に横島と一緒に行ったよ。 その時の修行で俺は魔装術を完全に習得したし、横島は文珠を習得した」

食べるのを止めない雪之丞は、少し面倒そうな表情を浮かべ説明した


「ふーん、あいつ結構凄いんだな…」

他のテーブルに居る横島を横目でチラ見した魔理は、初めて聞く横島のちゃんとした話に驚きを隠せない様子である


「そんな… 伝説の修行場なのに…」

一方かおりは、あまりの話にショックを受けて呆然としていた



雪之丞達がそんな話をしている頃、横島はベスパとパピリオのテーブルに来て居る


「二人共遠慮するなよって…、パピリオは遠慮してないな」

横島が見たのは、皿に山盛りの料理を頬張るパピリオの姿であった


「こんな料理、初めて食べたでちゅ!」

美味しそうに料理を食べるパピリオをベスパは嬉しそうに見つめている


「ベスパも遠慮するなよ。 酒もまだまだあるぞ」

横島があまり食べてないベスパのグラスに酒を注ぐが、ベスパは何も言わない

と言うよりは、何を話していいかわからないのだろう


「二人共、今日は泊まってくれ。 小竜姫様とワルキューレの許可は取ってあるからさ。 ルシオラの事もゆっくり話したいしな」

優しい表情で横島がルシオラの名前を出すと、ベスパとパピリオの表情が複雑そうになる


「そんな顔するなよ。 お前達がそんな顔したらルシオラが悲しむだろ?」

少し苦笑いを浮かべて二人を元気づける横島

ベスパとパピリオはそんな横島の姿に目頭が熱くなる気がした


(姉さん… 姉さんの見る目は確かだったんだね)

自分達は知識や技術の割に経験不足な為、アンバランスで惚れっぽいと言っていた姉を思い出すベスパ

ふと姉の語っていたことが違っていた気がした


「ルシオラちゃん…」

寂しそうにつぶやくパピリオの頭を、横島は優しく撫でて元気づけようとする


「ルシオラの事は、俺に任せてくれ。 まあ、後でゆっくり説明するさ」

横島の表情と言葉に、パピリオは笑顔を見せて料理を食べていく

パピリオに笑顔が戻ったのにホッとした横島は、また別のテーブルに声をかけに向かう


「ねえ、パピリオ。 あいつ強いね」

横島の悲しみや苦しみを誰よりも理解しているベスパだからこそ、横島の強さを感じていた


「ベスパちゃん違うでちゅよ。 横島もずっと無理してまちた。 壊れそうな横島を救ったのは、ルシオラちゃんとあの人でちゅ」

パピリオの視線の先に居る魔鈴を驚き見つめるベスパ

そんなベスパにパピリオは、アシュタロス戦後の横島の状況や、先日横島が妙神山で語った苦悩や希望を話していく


「そうか…」

「あの人は横島とルシオラちゃんを、本当に大切にしてくれてるでちゅ」

パピリオの語るルシオラを失った後の横島は、ベスパの心に共感と罪悪感を感じさせていた

自分と同じように苦しんだ横島の気持ちを理解する半面、原因が自分だと思うと罪悪感で苦しくなる思いであった


「横島とあの人なら、きっとルシオラちゃんを助けてくれるでちゅ」

希望を持ち笑顔を見せるパピリオをベスパは優しく見つめている


(横島を救い、パピリオに希望を与えた人間か…)

ベスパは静かに魔鈴を見つめていた


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