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魔鈴心霊相談事務所始動!

この日、美神令子は不機嫌なオーラ全開で荒れていた

いつの間にか様子がおかしかった横島が、勝手に事務所を辞めてしまった事が原因である

元々いくらでもいいから使って欲しいと言われて仕方なく使っていただけなのだが、なんか納得がいかない

辞めたければいつでも辞めていいと常々告げていたし、遅かれ早かれ辞めても不思議ではない時給だったのは自覚してるがやはり面白くない


「そういえば小竜姫様が霊力を目覚めさせてから変になったのよね…… やっぱり変な力でも授けたのかしら?」

あの横島があれほど変わるなど有り得ないと言い切れるほど変わったと思うのだ

原因として思い浮かぶのは小竜姫と魔鈴である


(あのクソ女…… 今に見てなさいよ!)

疑問は尽きないが令子の怒りの矛先は魔鈴に向かっていく

横島の隣を離れず寄り添うように居る姿を思い出すと殺意すら沸いてくるのだ


そんなやり場のない怒りがすぐに爆発出来ない理由は、唐巣が小竜姫の言葉により魔鈴の側について事務所設立に協力した件にあった

令子の力ならば魔鈴の一人くらい簡単に潰せるが、唐巣が動いた以上それほど簡単でないのも確かである

GS業界に顔が広い唐巣を怒らせるようなやり方は、令子といえどやりたくない


(あいつだって知られると恥ずかしい事や、後ろめたい事が絶対あるはず!! 今に化けの皮を剥いでやるわ)

一人でぶつぶつと殺気を放つ令子を、おキヌは心配そうに見守っていた

横島が事務所を辞めたショックはおキヌも同じだなのだが、以前にエミの引き抜きの時に冷たかった令子が熱くなってるのを見ると今回は逆におキヌが冷静になってしまう


(横島さん……なんで……)

横島が辞めた原因を考えて悲しむおキヌだが、横島が以前から時給の件で何度も令子に掛け合っていたのも知っている

何度か食事を作りに行ったが、お金に苦労してたし辞めたのが仕方ないのも何となく理解してる

それでもおキヌの悲しみは消えなかった



一方同じ日、横島のアパートの部屋では魔鈴心霊相談事務所の標札がかけられていた

部屋の横島の私物を異界の魔鈴宅に運び、簡単な応接室にしただけの狭い事務所だがとりあえずは十分である

事務所用の物件を借りる事も少し考えたが、今後の事を考えると賃貸よりは買う方がいいだろう

結果的に横島のアパートを利用して、しばらくは資金稼ぎすることになった


「横島君、魔鈴君おめでとう」

事務所開きの日、唐巣とピートがお祝いにとアパートを尋ねて来る

狭いながら多少は事務所らしくなったアパートに、唐巣は肩の荷が降りたのか少しホッとした表情をしていた


「しばらくは大変だろうが、頑張ってくれたまえ。 私で良ければいつでも相談に乗ろう」

事務所の開設メンバーが正規と見習い合わせて四人というのは、新規開設の個人事務所としてはなかなかの規模である

まあ大手の事務所や伝統ある事務所では弟子が多数居る事も珍しくないが、新設の個人事務所では多い方だろう

ちなみにドクターカオスに関しては、未来と同じく研修期間無しですでに正規のGSとなっている

これに関してはやはり、ヨーロッパの魔王との異名を持つカオスの研修など不要だとの協会判断だった

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