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それぞれの想い

「アシュ?」

冥子が言いかけた言葉の続きを考える銀一達だが、もちろん思い浮かぶはずがない


「冥子、あんたはケーキでも食べて大人しくしてるワケ」

「は~い」

冷や汗をかいて疲れた表情のエミが冥子の興味をケーキに誘導すると、冥子は嬉しそうにケーキを取りに行く


「さっきの話は忘れなさい。 友達ならいずれ本人が話すまで待ってるワケ」

酒を飲み一息ついたエミは、冥子の言葉の続きを考える銀一達に静かにそう告げる

そしてそんなエミの様子に驚きを感じていたのはピートであった


(エミさん変わりましたね…)

よくエミに引っ付かれてることがあったピートは、今日のエミは前と違うと感じている

前のエミなら横島のあの話をわざわざ止めたり、銀一達に忘れるように言わないだろう

ピートにはよく引っ付いてはいたが、それでもエミが根本的に他人に対して距離を開けていることは知っている

そんな一歩引いた感じのエミが、自分から横島や銀一達のために動いたのは驚きであった


「えっと…、横島のGSとしての話よね。 霊能力と言う点だけで言えば日本でもトップクラスよ。 ただ、GSには向いて無いワケ」

忘れろと言われても気になる様子の銀一達に、エミは少し考えながら説明していく

聞いてる銀一や愛子や小鳩は、エミが日本トップクラスと言い切ったことに驚き目を見開く

普段の横島を見るとどうしてもそこまで凄いとは思えない

ただ3人の中で銀一だけは、先日の事件を思い出してある意味納得している


「霊能力があればGSになれるんじゃないんですか?」

「素人は知らないだろうけど、GSの免許を取得するのは霊能力が必要だけど、続けるのは別問題なのよ」

不思議そうな小鳩の問い掛けに、少し複雑な表情を浮かべたエミはGSの現実を語りだしていく


「GSとして仕事を続けるには、一種の覚悟や割り切りが必要なのよ。 GSに依頼の来る仕事は、悲しみや苦しみに満ちた悪霊や幽霊がほとんど… そして依頼人も限界まで追い詰められてることも多いわ。 でも私のような一流のGSでさえ一日に数件の除霊をこなすだけで精一杯なの」

才能さえあれば一獲千金も可能なGSは、一般人からすれば憧れる職業の一つである

しかし、エミの語る現実はそんな光の陰にある厳しい現実だった


「でもね、私達GSは慈善事業でも公務員でも無いわ。 いくら相手が不幸でも可哀相でも、見合う報酬と自分で解決出来る見込みが無ければ受けない。 そこで線を引か無ければ、自分の人生を犠牲にする覚悟が無ければダメなのよ。 冷たいようだけど、それがGSと言う仕事なの。 全て仕事として割り切るか、人生を賭けて他人を救う覚悟が要るワケ」

エミはそこまで話してチラリと唐巣に視線を向ける


「あそこの人の良さそうな神父がいい例なワケ。 自分の人生を犠牲にして弱者や貧乏人を救ってるわ。 そのせいで年に何回も空腹で倒れるのよ。 立派だと尊敬するのは簡単だけど、本当にそれでいいのか私は疑問なワケ」

いつの間にか銀一達は、エミの話に真剣に聴き入っている

華やかな世界の裏側、人を救う聖者のような神父の現実

それは彼らにとって非常に重く、普通の現実と同じなのだと痛感させられる


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