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平和な日常~夏~

そのままお昼近くまでエヴァと囲碁を打っていた横島だったが、この日は夜明け前から降り続いてる雨の影響からか客の入りがイマイチだった

まあそれでもお昼のにはそこそこ客が入りお昼の客が途絶えた午後三時半を過ぎた頃、一人の熟年の女性が店を訪れていた

年齢的にはおばあちゃんと言える年齢なのだろうが、恐らく年の割には若い老婦人といった雰囲気の女性である


「ここは変わらないわね……」

高級そうな雨傘を傘立てに置いた女性は、店内に視線を向けると小さな声でポツリと呟く

その瞬間昔を思い出したかのように我を忘れそうになった女性は、まるで吸い寄せられるように庭が見える席に座る


「いらっしゃいませ」

「貴方が店主かしら? 本当に昔のまま店を使ってるのね……」

お冷やと一緒に注文を聴きに行った横島に何故か一瞬ハッとしたような表情を見せた女性は、少し複雑そうな表情で横島を見つめていた

少し間が悪かったかと内心で反省する横島だが、女性の瞳は横島に向いてはいるが横島を見てない

まるで記憶の中にある何かを見ているようである


「いい店だったんでそのまま使ってます。 喫茶店にはちょっともったいない店ですけど」

「そんなことないわ。 元々ここは洋食屋なのにコーヒーだけの学生とかも多かったのよ」

どこか遠くを見つめるように店の中に視線を向ける女性は、喫茶店にはもったいない店だと言う横島にゆっくりと昔の話を語りだす

それが何年くらい前なのか具体的には語らないが、現代のように飲食店多くないない時代はここの洋食屋は多くの学生が集う店だったらしい

食事だけに限らずデートで訪れたり仲間うちで集まって騒いだりと、現代のファミレスのような店だったようである


「初耳ですね。 洋食屋の老舗だって聞きましたから」

「それだけ時が過ぎたのよ。 本人達にはその気がないのに老舗と言われて客が減ったのが、本当に寂しいってよく言ってたもの」

横島でさえも初耳の昔の店の話に、横島はいつの間にか引き込まれるように聞いていた

どうやら女性は以前の店主をよく知るらしく、ここが元々は高級感のある老舗ではなく庶民的な洋食屋だったと懐かしそうに語る


「マスター、お腹空いた~」

「あれ、今日はパンなの?」

しばし女性の話を聴き入っていた横島だったが、そんな時に学校帰りの中等部の少女達が駆け込んで来た

ちょうどお腹が空く時間だし学校帰りに寄り道したようだ


「ああ、全部手作りだぞ」

「それじゃ、これとオレンジジュースで」

「私はアイスティーとこれにするわ」

横島は老婦人の女性に少し外すからと言葉をかけて少女達の対応をするが、彼女達は雨のせいで部活が休みになったと喜んでいた

そんな少女達への対応を済ませた横島は老婦人の女性の元に戻るが、彼女は今度は少し嬉しそうな表情で横島を見つめる


「なるほどね。 近衛君が言ってた通りなのね」

「はい?」

「近衛君……じゃ伝わらないわね。 麻帆良学園の学園長とは友人なのよ。 面白い子がここで喫茶店を開いたって聞きまして。 それに孫も貴方にお世話になったから、一度お会いしたかったんですよ」

何処かで見たような意味深な笑みを浮かべる女性に、横島の表情が一瞬ピクリと動く



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