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平和な日常~夏~

それから数日が過ぎたこの日は朝から雨が降っていた

タマモが復活してから初めての雨が降っており、目覚めたタマモは初めて見る雨に何とも言えない表情で窓から外を見つめていた


「やっぱ今日は雨か…… 今日はあいつらにご飯あげるだけにしような」

いつもならばご飯をあげた後に猫達と一緒に遊んでいるタマモだが、この日は雨で遊べないのが少し残念そうだった

まあそれでもご飯をあげるついでに猫達の様子も確認しており、猫ハウスで雨に濡れずにくつろいでる猫達を見たらホッとした表情を見せていたが


「さて今日の朝飯はなんにする?」

「おいしいの」

「美味しいの? 一応全部美味しくなるように作ってるぞ?」

雨のため庭の手入れなど出来ずにそのまま店の厨房に行った横島はタマモに朝ごはんのリクエストを聞くが、タマモのリクエストは美味しい物という抽象的な物だった

どうやら食べたことがない料理が食べたいらしい


「それじゃ今日は時間があるし、久しぶりにパンでも焼くか。 焼きたてのパンは美味いぞ」

タマモのリクエストがお任せだった横島は少し考えた結果、久しぶりにパンを焼こうと決めたようだ

まあ通常のメニューにも食パンやクロワッサンなどはあるが、あれは基本的に異空間アジトでハニワ兵が作ったパンである

ケーキ類を始めとしたスイーツを毎日手作りしてる横島としては、流石にパンまで毎日焼く余裕はないのだ


そんな訳で横島は通常の仕込みと平行してパンの仕込みも始めるが、この日は時間的に余裕があったことからタマモにも少し手伝わせていた

いつもはワガママ一つ言わずに大人しく見ているタマモだが、時々やりたそうに見ていたのを横島は当然気付いている

流石に難しい作業は無理だがパンの形を作る作業はタマモでも出来るし、自分で作ったパンを食べさせてやりたいと横島は考えたようで一緒にパンの形を作っていく


「それは猫か。 こっちはハニワ兵か?」

横島に好きなように作っていいと言われたタマモはニコニコと楽しそうに生地を形成していくが、何故か猫とハニワ兵を作っていた


「さよちゃんとよこしまはむずかしいの」

どうやらタマモは一緒に暮らす者を作りたいようで、猫やハニワ兵に続き横島やさよや自分のパンを作っていく

基本的に人の顔をパンで作るのは難しいのだが、タマモは器用にコミカルで笑顔の横島とさよと自分を作ってしまう

正直その完成度は横島の予想以上であり、普通に売ってそうなほど上手い出来だった


「本当に上手いな。 じゃあ終わったら売り物の方も手伝ってもらおうか」

料理が上手いというよりは人並み外れた器用さを見せつけたタマモに、横島は続いて売り物のパンの形成も手伝ってもらうことにする

流石にあまり難しいことは出来ないが、生地を丸めたり簡単な作業はすぐに覚えて出来るのだから彼女の潜在能力の高さが分かる結果だった

ただタマモ自身は自分が器用だとは理解しておらず、横島と一緒に同じことが出来るのが楽しいだけらしい

時折横島を見て自分の作った生地が同じなのを確認すると、ニコッと本当に嬉しそうな笑顔を見せて喜びを表していた



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