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プロローグ

腫れ物がとれたようにすっきりした表情の美智恵と令子

人間には重過ぎる運命と戦い生き残ったのだから当然なのかもしれないが…


そんな中横島は笑顔作り美智恵と令子を見つめていたが、心の中では不思議な苛立ちや不快感に襲われていた


一方美智恵は、過去に戻った後は死んだことにして五年間隠れてると言い、令子は母親が生きている怒りと喜びでいっぱいだった


「せめてあやまれー!!」

逃げるように笑顔で過去に帰る美智恵に令子は叫ぶ


「ごめんねー 令子!」

建物の影から現れるこの時代の美智恵

平和な時間を生きたせいか、すっかり幸せそうな笑顔である

そしてそのお腹には、新しい命が宿っていた



この瞬間……

横島の中で全てが壊れた



必死に周りや仲間を心配させないように頑張っていた横島だが、この瞬間を境に全てがまるで違った物に見えてしまう

幸せそうな再会をする二人を見て、横島はまるで血が逆流するような心の震えを感じている


この時、横島の心の変化に気が付いた者は居ない

心眼を持つヒャクメですら、令子の姿を見ていて横島の変化を見逃してしまった



そしてこの瞬間からだろう

横島が心を閉ざして、自らの大切な者をルシオラ一人だけにしたのは……

結局、時間にして僅か一分にも満たないその間に、横島は昔と変わらないような軽い笑顔に戻る



その後、令子の閃きでルシオラを横島の子供に転生させる話が出るが、横島が心は開くことは無かった


「とりあえず… これでハッピーエンドにしない? いつか将来生まれてくるあんたの子供に愛情をそそいでやれば、ルシオラも幸せになれるんだしね」

横島を気遣い言葉を選びながら語る令子と、心配そうに見つめるおキヌ

しかし令子の言葉とおキヌの表情は、横島の心をいっそう深い闇に沈める結果となってしまう


(ハッピーエンドか…)

その言葉に先程現れた美智恵の表情も重なり、横島は嫌悪感を増大させる


「俺、悲しむの止めます」

心とは正反対の言葉が自然と出た横島は、とても自然な笑顔を浮かべていた


「そうそう、前向きに考えて……」

令子とおキヌはそんな横島の自然な笑顔にホッとする

「彼女のために、俺…… 一日も早く子作りします。 さしつかえなければ今!!」

「結局それかい!!」

急に飛び掛かる横島をシバく令子と、そんな二人を嬉しそうに見ているおキヌ

二人はようやく元気になった横島と、元に戻った日常に幸せを噛み締めていた



(これが現実か……)

令子にシバかれながらも、横島の心は酷く冷めている

シバかれてる自分も、嬉しそうにシバいてる令子も、止めもしないで安心して見ているおキヌも……

横島の心は、全てを冷たく突き放して見ていた



この後、美神事務所はアシュタロス戦など無かったような日常に戻る

しかし壊れたものは元にはもどらず、ゆっくりと崩壊は現実世界でも進んで行く



そして横島の心を救う彼女と結ばれる日まで、横島の心は誰にも開かれることは無かった



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