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真の歴史へ・その四

一連の問題における鬼道の指導は必ずしも適切とは言えなかったが、それでも鬼道が精一杯頑張ってるのは誰もが認める事実である

小竜姫自身の価値観や考えを鬼道に話して、鬼道がそれをそのまま正しいと決めてしまい生きるのを小竜姫は望んでない


「少し肩の力を抜いてみるといいでしょう。 同僚や生徒と共に悩み考えてこそ、貴方の求める答えはあると思います」

戸惑いの表情を浮かべる鬼道に、小竜姫は少し肩の力を抜いてみる事も必要だと告げていた

加えてありきたりな答えを求めるのではなく、そのつど悩み考えてほしいとも思うのだ


「私も多くの失敗を経験しましたし、時には人や妖怪や魔族に教わる事もありました。 貴方の答えは貴方の人生で見つけて下さい」

結局小竜姫は悩む鬼道に明確な答えを何一つ示すことはなかった

鬼道は予想外の答えに戸惑い気味だが、裏を返せば小竜姫がそれだけ鬼道を信頼してるとも言える

教師という職業の重さを感じ真剣に向き合う鬼道だからこそ答えが必要ないとも言えた


「そうだ鬼道さん、今日はお暇ですか?」

「はい、休日は修行をするか授業の準備をするくらいなので……」

「ならちょうどいいです。 今日は夕食を食べて帰って下さい。 一日ゆっくりすれば、違うものが見えるかもしれませんよ」

戸惑ったままの鬼道を小竜姫は夕食に誘う

鬼道に一番必要なのは正しき道を示すのではなく、普通の幸せを経験させることではと考えたのだ


「流石にそれは申し訳なく……」

「構いませんよ。 ただ一つルールは守って下さい。 我が家に居る間は神族も魔族も妖怪も一切区別なく接して下さい。 それだけですよ」

申し訳なさそうに遠慮する鬼道に、小竜姫は半ば強引に夕食を一緒に食べることを決めてしまう

今の小竜姫の姿は神族の威厳のカケラもないが、それでも鬼道には恐れ多い存在らしい


(これは……)

そのまま小竜姫は鬼道を応接室からリビングに案内するが、その場にいるメンバーの雰囲気に驚き固まってしまう

この日は休日なのでおキヌ・小鳩・愛子の三人が遊びに行って不在なため、人外比率が高かった

というか人間は雪之丞一人だけである


見慣れる鬼道の姿に部屋に居る者の視線が集まり、鬼道はどうしていいか分からぬまま固まってしまう


「あれ、そいつは確か……」

「今はおキヌさん達の学校の先生をしてるそうです。 ちょうどいいので夕食を一緒にどうかと思いまして」

前に小竜姫を怒らせた鬼道を雪之丞は覚えていたらしく言葉に出そうとしたが、小竜姫がそれを遮り現在はおキヌ達の担任だと説明する

雪之丞にとって鬼道は小竜姫を怒らせた数少ない人間だったため、あまりいい印象はなかったが雰囲気があの時と違うことには気付いていたようだ


「せっかくですから、手合わせでもしてみますか? お互いいい刺激になるかもしれません」

相変わらず戸惑い気味の鬼道と暇そうな雪之丞を見た小竜姫は、ふと意味ありげな笑みを浮かべて二人を手合わせさせると言い出す


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