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真の歴史へ・その四

その頃横島事務所には意外な人物が訪れていた


「突然押しかけて申し訳ありません! 無礼なのは重々承知しておりますが、他に相談する人もおらず……」

事務所のドアを開けた小竜姫の前で、突然土下座して大声で頼み出したのは鬼道である

青いワンピースに可愛いらしい猫がプリントされたエプロンをしてる小竜姫は、目の前で突然土下座して大声を上げる鬼道に困り顔であった


「とりあえず中に入って下さい。 人が見てますから」

事務所の前で突然土下座する鬼道と土下座される小竜姫の姿は、外から見ると少し異様である

変な噂でも立てば困ると小竜姫は慌てて中に入れるが、鬼道はガチガチに固まっていた


「何かありましたか?」

「実は……」

何か思い詰めた表情の鬼道は小竜姫に促されるまま来た理由を語るが、それはやはり生徒にどう接していいのか分からないという悩みである


「僕はあの親父とずっと修行だけをして来ました。 小中学校もほとんど通えず友達も居なかったんですわ。 六道さんに誘われて霊能科の教師になったんですけど、若い女の子にどう接していいか悩んで……」

相変わらず緊張したままなんとか語っていく鬼道だったが、その悩みは生徒の気持ちが理解出来ない事が大きいようだ

原因はやはりおキヌ達とかおりの対立であり、小竜姫の存在もまた鬼道にプレッシャーをかけていたようである

周りの教師は鬼道を頑張っていると評価しており、あまり頑張り過ぎないようにブレーキをかけてるくらいだった

しかし鬼道は持ち前の努力家な精神を発揮して、なんとか解決しなくてはと自分にプレッシャーをかけていたようである


「小竜姫様にこのようなくだらない悩みを相談する事が無礼だという事は重々承知しておりますが、他に相談する人もいなく……」

一通り悩みを語った鬼道は無礼を詫びるが、小竜姫がそれほど大袈裟過ぎる態度を受けるのは久しぶりであった


(あの時はちょっとやり過ぎましたね)

鬼道の態度が大袈裟な理由は、明らかに鬼道の父親に小竜姫がキレた事が原因である

ちょっとやり過ぎたかなと思う小竜姫は苦笑いを隠せないでいた


「人を教え導くのは難しいことですよ。 何が正しく何が間違ってるかなど、私にも分かりません」

苦悩する鬼道に小竜姫は少し悩んだのちに自分の考えを話し出すが、小竜姫とて何が正しく何が間違ってるなど分からないことである

神族ですら極限に至ると魔族と大差ない存在である事を経験した小竜姫にとって、当たり前の神族らしい答えを言うなど出来ないことだった


「小竜姫様……」

ちょっと困った表情で分からないと告げる小竜姫に、鬼道は心底驚きの表情を浮かべる

かつて鬼道の父親に裁きを降した小竜姫ならば、鬼道の悩みを解決する道を教えてくれると信じていたのだろう


「神族といえど私は全知でも全能でもありません。 人と同じく悩みもすれば失敗もします。 ですから貴方もそれでいいのですよ」

驚きや戸惑う鬼道に小竜姫は少し困ったように微笑む

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