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幻の初恋

あまりの恐怖に事務所から逃げ出した令子だったが、行く宛などあるはずはない

とりあえず、都内の某外資系ホテルに部屋をとり逃げ込んでいた


「困ったわ… これからどうすれば…」

ベッドに潜り込んでガタガタ震えながら今後を考える令子は、いっそこのまま海外にでも逃げようか、などと本気で考え始めている



その頃おキヌはオカルトGメンの美智恵の元を訪れていた


「おキヌちゃん、1人で来るなんて珍しいわね? なんかあった?」

おキヌが1人でオカルトGメンに遊びに来るはずがない

美智恵は事件でも起きたのかと思った


「いえ、美神さんが予定された時間になっても帰って来ないんです。 ちょっと出かけてくると言ったっきり。 私心配で…」

悲しそうに顔をうつむくおキヌ

その様子からは本当に令子を心配してるのが美智恵には良くわかった


「わかったわ。 こっちで探してみるから、おキヌちゃんは事務所で待ってて。 何にも無くて帰って来る可能性も高いしね」

美智恵はおキヌを励ますように語りかけ、オカルトGメンの人間を使って令子を探せることにした


「よろしくお願いします。」

深々と頭を下げるおキヌに美智恵は感心する

(令子もこのくらいちゃんとしてたら…)

そんなことを心でつぶやく美智恵は気が付かない

深々と下げられたおキヌの口元が微妙に笑みを浮かべていたことを…



オカルトGメンを後にしたおキヌは、その足で近所の石神様の元に向かった

石神様とは、かつて幽霊時代におキヌと対戦して敗れた相手である

おキヌが生き返って以来、再び近所の浮遊霊達を仕切っていたのだ


「こんにちわ。 石神様、ちょっとお願いしたい事があるんですが」

「おキヌちゃん、久しぶりだね~ 元気にしてたかい? 困ったことがあれば何でも言ってくれ。 あたい達のボスはあんたなんだからね」

突然訪ねて来たおキヌを温かく迎えた石神

どうやらおキヌは今でも付近の浮遊霊のボスのようだ


「美神さんが帰って来ないんです。 どっかで見かけた幽霊が居たら、教えて頂きたいのですが…」

心配そうに説明するおキヌは申し訳なさそうに頭を下げた


「そんなことだったらお安いご用だよ! 浮遊霊のネットワーク使ってすぐに見つけてやるから待ってな!」

石神はすぐに付近の浮遊霊に令子を探すように伝える

これがおキヌの頼みだと知ると、どの浮遊霊も気合いが入って探しにいく

情報は幽霊から幽霊に伝わり、東京中の幽霊が令子を探すことになる



無事に令子の包囲網を完成させたおキヌは、事務所に帰ってゆっくりお茶を飲んでいた


「クスクス… にがしませんよ、みかみさん クスクス…」

今回は、どんなおしおきとさいきょういくをしよう?

おキヌは楽しみを待ちわびる子供のように、無邪気な笑顔を見せる


ただし、部屋には漆黒のオーラが充満していたが…



その後、浮遊霊の情報により令子の存在がおキヌに伝わったのは、わずか1時間後であった

同時におキヌは美智恵に令子と連絡を取れたからと言ってお礼を述べる


「さて、迎えに行きましょうか」

そのつぶやくと、漆黒のオーラが部屋から消え失せて優しいおキヌに戻った


「今行きますからね。 み・か・み・さ・ん♪」

最後に一瞬だけ見せた表情は……


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