「えっ！？　横島君ＧＳ試験受けたの？　この前まで受ける気ないって言ってたのに……」

「いや、ちょっと事情があってな。　受けたら偶然受かったんだよ」

女子に囲まれたまま困った様子の横島に、タイガーの言葉は更なる追い撃ちをかけてしまう

先日までは学校にもロクに来ない横島が、突然ＧＳ試験に合格して年上美女とＧＳ事務所を開くなど誰もが半信半疑のようである

仮に魔鈴があれだけ言い切ってなければ誰も信じなかっただろう


「タイガー君はどうだったの？」

「ワッシはダメでした。　ＧＳ試験は合格するのは難しいですケン。　横島サンも現にかなり強かったですし……」

横島の試験の話題で愛子は、先日タイガーがＧＳ試験を受けると言っていたのを思い出す

そんなタイガーに結果を聞くが、こちらは落ち込んだ様子でダメだったと告げる


（まずったな）

タイガーの落ち込んだ様子に横島は、自分の偶然と言う失言に気付き申し訳なく思う

真剣に修行を重ねたタイガーが居る場所で偶然受かったと告げるのは、少し無神経だったと後悔する


「うわっ……凄いお弁当ね」

女子達の興味は魔鈴の弁当へも向かい横島は囃し立てられるように弁当を開けるが、その気合いの入った弁当に女子達は言葉を失う

驚く者や微妙に悔しそうな者など反応は微妙に違うが、魔鈴の料理の腕に驚いている者が大半だった


「横島に美人の彼女が……」

一方男子達の大半は横島に彼女が出来た現実を受け止められずに、そのまま放心状態だったという

特に男子達は横島と自分を比べて、内心では小ばかにしていた者も多いだけに信じられないようである


結局、この昼を境に横島の学校での立場は微妙に変わることになった

中にはダメ男の横島に惚れた魔鈴が変わり者だと陰口を叩く者も居たが、そんな陰口も未来から来た後に変わった横島の態度で消えていくことになる


しかしこの時の魔鈴の行動が、横島の中にあった人間不信に再び僅かな火を点ける結果となることを魔鈴は気付けなかった


一方学校を後にした魔鈴は、満足げな表情で帰宅していた


「あら雪之丞さん、おはようございます。　今ご飯の用意をするのでちょっと待ってて下さいね」

魔鈴が帰宅すると出掛ける前まで寝ていた雪之丞が起きており、暇そうにテレビを見ている

時間的にもう昼食になる事から、一緒に食事をしようとさっそく準備に取り掛かっていた


「手間をかけさせて、悪いな」

「いえ、ちょうど私も昼食にするとこでしたから」

横島の居ない魔鈴宅で雪之丞は、魔鈴と二人にされると間が持たなくて困ってしまう

元々勢いでメドーサを裏切った後でなんとなく横島の話に乗っただけなのに、流されるまま横島の彼女の家に居るのだから戸惑いもあるようだ

雪之丞自身は人付き合いの悪さから、女性とのコミュニケーションが苦手だしあまり経験もない

イマイチ魔鈴にどう対応していいか解らないようである


「午後はピートさんのお見舞いに行こうと思うのですが、一緒にいかがですか？」

手軽にパスタで済ませた魔鈴は雪之丞と昼食を食べているが、雪之丞があまり口を開かないため魔鈴から話し掛けていく

内容は自己紹介的な事から始まり昨日の出来事や午後の予定などを話していくのだが、ピートの見舞いと聞くと表情が微妙に変わる