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真の歴史へ・その四

「何か分かったか?」

「申し訳ありません」

ところ変わって南部グループの研究所では、スーツ姿の茂流田が苛立ちの表情で白衣姿の研究者らしき人間に報告をさせるが新しい情報はない


「不始末ね、茂流田。 本社は貴方のプロジェクトからの解任を考えてるわよ」

同じくスーツ姿の須狩だったが、こちらの表情は面白そうにクスクスと笑っていた

茂流田と須狩は同じプロジェクトの仲間だったが、ライバルでもある

プロジェクトのリーダーは茂流田だったが、須狩は常々それを狙っていたのだ

今回の失態は取り返しがつかないほど重く、須狩は解りやすいほどに機嫌がよかった


「笑い事じゃないだろう! オカルトGメンに気付かれたらお前も会社も終わりなんだぞ!!」

「本社は事業の海外への移転を決定したわ。 半年以内に施設を移すそうよ」

苛立ち須狩に八つ当たり気味に当たる茂流田だったが、須狩が本社の決定を伝えると顔色が更に悪くなる

オカルトGメンの介入に本社が思った以上に敏感に反応したのだ

実際にはオカルトGメンが動いた形跡は今のところないが、心霊兵器の研究所を海外に移すのは簡単ではない

本社はすでに移動先の選定や移動手段の方法を模索していた


「それで試験体の行方は?」

「それがさっぱり……、まさに煙りと共に消えましたので……」

苦悩の表情を浮かべる茂流田を放置した須狩は試験体の行方を尋ねるが、そちらの行方は全く掴めてない

当初南部グループ側はオカルトGメンが密かに捕獲したのかと、オカルトGメンの関連施設を監視や調査したのだがその形跡はないのだ

暴走させた試験体が何の形跡もなく消えたことは、オカルトGメンの介入と合わせて南部グループを警戒させるには十分だった


「茂流田には研究の成果を纏めて欲しいそうよ。 本社はそれの成果次第で今後を考えるとも……」

「分かった。 すぐに明確な成果を出してやる」

須狩から伝えられた本社の意向に茂流田の表情は険しくなる

本社としては茂流田の処分は必要不可欠だったのだが、茂流田に変わる優秀な人材がなかなか居ないのも確かだった

どちらにしろ茂流田の研究の成果を纏める時間が必要だという意見で本社側は一致したらしい



「ちっ、こうなったら例の計画を早急に進めるしかないな」

一人で自分の研究室に戻った茂流田は、以前から密かに研究していた計画を早急に進めることにした

それは未来の歴史では技術的な難しさから研究が完成する前に終わった計画の一つである

人造魔族に続いて研究開発予定だったそれは、完成すれば世界に多大な影響を与えると考えられていたモノだった



そんな茂流田のパソコンには八房と人狼に関する様々なデータが並んでいる

それが歴史の新たな一ページなのか修正力なのかは、この時は誰にも分からないままだった


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