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真の歴史へ・その四

そのまま不審者まで数メートルの地点から隠れる事なく近寄り始める美智恵とマリアだったが、それに気付いた不審者は突然走り出す


(オカルトGメンだと!? さっきの煙りといい一体どうなってるんだ!)

冷静な美智恵とは対照的に南部の兵士は動揺を隠せない様子だった

本来ならば自分の撃った銃弾の影響で人狼が暴れ出しているはずなのに、突然人狼の周りが煙りに包まれると一向に人狼の動きがないのだ


(クッソ! あのキチガイめ、話が違うじゃねえか!)

謎の煙りといつまでも暴れない人狼に、兵士は研究者から渡された銃弾の効果が失敗したのだと考えていた

本来ならば暴れる人狼のどさくさに紛れて逃げるはずだったのだ


「オカルトGメンです。 そこの貴方、止まりなさい!」

逃げる不審者を追う美智恵は声を上げて静止を促すが、返事代わりに返って来たのは銃弾だった

とっさにマリアが美智恵を銃弾から庇った為に怪我はないが、兵士は逃げながらも二発三発と銃弾を撃ち込んでいく


「マリア、私はいいから確保を!」

兵士が発砲した事で少し離れた場所に居る西条が威嚇射撃に銃弾を数発撃つが、それでも兵士は止まらない

美智恵がすぐに不審者の確保を命じると、マリアはジェット噴射で兵士に一気に接近していくのだが……


「ク…ソ……野郎が……」

マリアが兵士に手を伸ばした瞬間、兵士は突然何処からか撃たれて血を吐きながら倒れ込んでしまう


「マリア!」

「長距離からの狙撃を・確認しました。 不審者の保護と狙撃手の追跡・どちらを優先させますか?」

目の前で倒れた兵士を前にマリアは駆け寄る美智恵にこの後の指示を仰ぐ

兵士が撃たれたのは右側の胸であり一刻を争うほど重体だった

兵士を助けるのか狙撃手を追うのか、どちらか一方しかマリアには出来ない

マリアが病院に運べば助かる可能性は僅かにあるが、その場合は離れた場所に居る狙撃手は諦めるしかないのだ


「クッ……、病院に運んでちょうだい」

マリアの問いに美智恵は唇を噛み締め悔しさを露にするが、オカルトGメンとしては目の前の不審者を見捨てる選択は選べなかった

相手の素性が解らぬ以上、誰が見てるか解らぬ場所で怪我人を見捨てるそぶりを見せたら後でどんな事になるか分からない

第三者に付け込まれる可能性がある行動など取れなかった


(戦力を分けたのがアダになったわね)

重体の兵士を抱えてジェット噴射で病院に急ぐマリアを見つめ、美智恵はため息をはく

正直美智恵は不審者の命よりも狙撃手を確保したかったが、オカルトGメンとしては後で問題になりそうな行動は取れなかった


「先生、追いますか?」

「これ以上の追跡は無理よ。 狙撃手が一人とは限らないし、オカルトGメンは武装した兵士と戦争なんて出来ないもの」

狙撃手の方を警戒していた美智恵の元に少し遅れて西条が到着するが、美智恵はこれ以上の追跡を諦めるしかない

山の中で武装した兵士を追うなどオカルトGメンの仕事ではないのだ

装備や人員を考えてもこれ以上の追跡は危険でしかなかった

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