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それぞれの想い

「たくさん人間がいるでちゅね~」

久しぶりにたくさんの人間を見たパピリオは、キョロキョロと辺りを見渡していく


「先生、そいつは魔族では…?」

警戒心むき出しのシロは、パピリオを見て威圧しようとする


「犬でちゅね。 横島のペットでちゅか?」

しっぽのあるシロを少し珍しそうに見るパピリオ

先日横島に新しい仲間の話などを聞いたが、シロがその仲間だとは気が付かなかったようだ


「拙者は狼でござる! それに先生の弟子でござる!!」

「止めなさい馬鹿犬! 横島が呼んだ客に喧嘩売らないの!」

霊波刀を出そうとしたシロに、タマモのツッコミが入る


「狼でござる!」

律儀にタマモにまで訂正するシロに、横島と魔鈴な苦笑いを浮かべていた


「パピリオは俺の妹なんだから、お前ら仲良くしろよ。 パピリオも、タマモとシロはペットじゃなくて仲間だからな」

どちらかと言えば警戒しているのはシロ一人だった

タマモは魔鈴からパピリオの存在を聞いて知っているし、パピリオは珍しい人狼に興味を示しただけである


「私はタマモで、こっちがシロよ。 よろしくね」

シロとは対照的にタマモは笑顔でパピリオに挨拶する

普段は逆なだけに非常に珍しい光景であった


「ふーん、今度は狐でちゅか。 わたちはパピリオ。 うちの横島が世話になってまちゅ」

何故か母親のように挨拶するパピリオを、タマモは興味深そうに見つめている


「パピリオ…、まるでお袋みたいだな。」

三人のやり取りを見ていた横島は、突然パピリオが母親みたいな挨拶をしたのを見て苦笑いを浮かべていた


「それだけ横島さんを大切な家族だと思ってるんですよ」

タマモ達を優しく見守っていた魔鈴も、思わず笑みがこぼれている


「ほらシロちゃん、ちゃんと仲良くしないと… 横島さんの妹なんだから」

「拙者犬塚シロ。 横島先生の1番弟子でござる。 パピリオ殿済まなかったでござる」

戸惑っていたシロだが、魔鈴に優しく諭されて素直にパピリオに謝った

この返の切替の速さはシロの長所だろう


「気にしなくていいでちゅよ。 それより…」

シロに笑顔を見せたパピリオだが、その視線は魔鈴に移っている

横島と魔鈴の二人を交互に見つめながら、パピリオはあることに気が付いていた


(この人が横島の大切な人でちゅね…)

探るように魔鈴を見つめるパピリオ

あの戦いのあと苦しむ横島に光を与え、姉のルシオラの事も含めて横島を愛した人物

その相手が魔鈴だとパピリオはすぐに気が付いていた


「初めまして、私は魔鈴めぐみです。 パピリオちゃんよろしくね」

そんな珍しく真剣な表情のパピリオに、魔鈴は優しく声をかける


パピリオが自分に複雑な思いを持つのを、魔鈴はある程度予想していた

まだ幼いパピリオが、兄と慕う横島の恋人を無条件で喜ぶとは思ってない

ルシオラの事もあるのだし…

今後魔鈴はパピリオと向き合い、ゆっくりと信頼を得ていくつもりである


「よろしくでちゅ」

少し緊張気味のパピリオと笑顔の魔鈴は、ゆっくりと握手をしていた

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