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真の歴史へ・その三

結局その日は急遽買ったベッドで人狼の二人は泊まることになったが、次の日にはタマモが前日に買った家具やソファーなどが次々に事務所に配達されていた

広くなったリビングや新しい客室には新しいソファーや家具が配置されるなど、慌ただしい一日である



一方八房を持つ人狼に関しては24時間体制で警戒を続けているが、不思議なことに全くと言っていいほど動きがない

山に来た当初こそ付近の動物や妖怪を襲っていたが、周りに誰も近寄らなくなると動きが止まったのだ

半径100メートル付近にはどんな動物も妖怪も近寄らずに、まるで人狼の縄張りを避けるようになっていた


「南部グループだったとはな……」

そして武装した人間達の正体だが、こちらは比較的簡単に判明する

今日の朝方に交代要員がやって来て、交代した者達をタマモの式神が尾行したところ南部グループの研究所に戻っていたのだ


「一番厄介なところと繋がったわね。 どこで八房の情報を手に入れたのか知らないけど、対応が難しくなったわ」

正直ルシオラも南部グループがどこまでこの事件に関わっているのか判断に迷っている

八房か人狼を欲しているのか、それとも不自然な人狼がすでに南部グループの心霊兵器となっているのか判断がつかないのだ


「罠の可能性も否定出来ないですね。 香港の件で裏で糸を引いていた相手が南部グループの背後に居ないとは限りませんし……」

ルシオラが纏めた情報に小竜姫は、警戒心を高め香港の件を思い出す

もしかするとあの事件は自分達の実力を計るための布石だったのではと、あの後に考えていたのだ

それがアシュタロスなのか別の存在の考えなのかは分からないが、あまりにも撤退と後始末が見事だっただけに失敗するのを前提にしたとも考えられるのだった

最悪の想定としては、何者かが小竜姫達を始末する為に人狼と八房を利用したのではとも考えられる

それだけフェンリルは強大な存在だった



同じ頃、南部グループの研究所では茂流田と須狩は試験体こと人狼の報告を聞き今後の対応を協議していた


「動かないか……、元々人狼は自然と調和する平和的な性格だからな。 洗脳が不完全な分だけ戦闘的にはならないか」

茂流田は山に入った途端大人しくなった人狼の原因を考えるが、元々あまり好戦的な妖怪でない人狼なだけに洗脳に若干苦労していたのだ

なまじ霊力と意思が強いだけにコントロールが難しかったのである

一応意思だけは奪ったはずなのだが慣れ親しんだ自然に入ったのが原因で、人狼の魂が洗脳に抵抗してるのではと予測していた


「どうするの? あれじゃデータが手に入らないわ」

「うむ……、もう少し様子を見てもダメなら興奮剤でも使うしかないだろうな」

須狩と茂流田は今後の対策を考えるが、実験用に開発した妖怪用の興奮剤を投与する事も含めて検討に入る

放置する事も考えたが、八房オリジナルの性能と人狼の潜在能力のデータがどうしても欲しかったのである

二人は今までは慎重に慎重を重ねて行動して来たのだが、もしかすれば究極の心霊兵器が開発出来るかもしれないとの欲求には勝てなかった

これが原因で外部に秘密の漏洩や心霊兵器の開発に気付かれる可能性もあったのだが、この時ばかりは科学者としての欲求を抑えることが出来なかった

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