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真の歴史へ・その三

自ら張った結界にそっと手を添えたタマモは妖力を高め集中していく


「さ迷える魂達よ。 我、金毛白面九尾の名において在るべき世界へ導かん」

タマモの呪文により結界内部には青く輝く不思議な炎が一気に広がっていった

しかしその炎は何一つ燃やすことなく、周囲に居るさ迷える妖怪達の魂を浄化して輪廻転生へと導いていく


「これは……」

「ここで殺された妖怪達の魂よ。 恨みや憎しみで転生する事が出来ないでいたの。 私に出来るのは彼らを苦しみから解放して送ってやるだけ」

青く輝く炎に包まれた魂達が天に上っていく姿を、雪之丞は驚きを通り越した表情で見つめるしか出来ない

雪之丞自身はこの土地に何か不穏な気配を感じる以上は感じなかったのだが、まさか殺された妖怪達の魂がさ迷っていたとは思いもしなかったのだ


「自然界の弱肉強食で敗れて死ぬのは仕方ないけど、人間の欲望で無意味に殺された者達は晴らせぬ恨みを抱えたままになるのよ」

青き浄化の炎は、さ迷える魂達を送ると自然と消えてしまう


「炎はね、浄化もすれば破壊もするのよ。 救うべきモノは救い破壊すべきモノは破壊するのが、私のやり方……」

呆然とする雪之丞の前で、タマモは青き炎の消えた結界内の屋敷に冷たい視線を向ける

再びタマモが結界に手を添えると、次の瞬間には屋敷が赤々とした炎で燃え始めた

しかもその炎は本来燃えないはずの鉄や大理石のような石まで燃えていくではないか

僅か数分で屋敷は跡形もなく消え去り、地下室があった場所には大きな穴が空いてるだけである

屋敷の周りの草花は一切燃えてないにも関わらず、屋敷だけが燃えて消え去った跡地は異様としか言いようがない


「流石に疲れたわ。 本来燃えないモノを燃やすのは楽じゃないのよ。 さあ、私達も妙神山に行くわよ」

全てが終わり結界を解除したタマモは珍しく疲れの表情を見せるが、もうこの場所に長居は無用だと言わんばかりにさっさと妙神山に転移して行ってしまった

残るのはかつて村があった自然と屋敷の跡地だけである



一方妙神山では横島と小竜姫が助けた妖怪を母屋の客室に寝せていくが、混乱を避けるために起きたら暴れそうな妖怪は結界で拘束する必要があった

これから横島達は一人一人に事情を説明していかなければならないが、すんなり納得しない者も当然居る

一人一人と話して事情を納得してもらい、今後の事を考えてもらうのは簡単ではない

まあ助けた事情さえ納得してもらえば、後は妙神山付近に住む妖怪達が手助けしてくれるので横島達の仕事は主にそこまでだが……


この説得の作業は主に小竜姫とタマモの仕事だった

一見すると人間の横島と魔族のルシオラでは警戒される事も多いのだ



「あっちは終わったわ」

「こちらは簡単ではないですね。 トラウマを抱えてる人も少なくありません」

妙神山に戻ったタマモは横島と小竜姫と今後の作業を話し合うが、暴れる者やトラウマを抱えた者が多く大変だった


「あまり酷いようだと文珠で記憶を消した方がいいわね」

タマモは相手の精神に影響を及ぼしたり癒したりする術が使えるが、あまり酷いトラウマだと文珠で一定期間の記憶を消した方がいいと判断する

精神系の術は扱いが難しく一歩間違えれば精神崩壊する可能性もあるため、忘れさせた方が幸せな場合もあるようだ


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