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真の歴史へ・その三

その日、メドーサは都内を宛もなく歩いていた

美衣とケイを気まぐれで助けて以来横島達の援助の元で暮らしているが、はっきり言うと暇だったのである

当初はいろいろ疑ったりしてみたものの、横島達は利用するどころか監視すらしてないのだからメドーサとしては警戒するのが馬鹿馬鹿しくなっていた

黒幕に近いと理解した斉天大聖老師にしても、基本的に老師はゲームをしたりケイと遊んだりするくらいなのだからメドーサとしてはやることがない


(小竜姫があんな奴だとは思わなかったね)

横島事務所に出入りして以来メドーサが一番驚いたのは小竜姫の普段の姿だろう

普通の生活には神族のプライドのカケラも見えないのだから

小竜姫を神族として扱うのは唐巣くらいだし、唐巣に対しても小竜姫は普通にしてほしいと言うくらいなのだ

あまりの姿に偽装かとも疑ったが、小竜姫自身が神族として扱われるのを好んでないことに最近気付いている

巧妙に人間に化けているし、あれでは正体に気付く人が少ないのも頷ける結果であった


(やりたいことか……)

メドーサは以前タマモに言われた、やりたいことを見つければいいと言う言葉をふと思い出す

小竜姫は雪之丞達を弟子として楽しそうに育てているし、横島達との生活を楽しんでるのも見ていて分かる

だがメドーサには特にやりたいことなどなかった

煩わしい神魔の争いから抜け出したメドーサだが、いざ抜け出してみるとぽっかり穴が空いたように何か物足りないことを感じてしまう



「メドーサ……」

宛もなく歩いていたメドーサがばったり出くわしたのは美神美智恵だった

顔を見るなり警戒心を強め表情を消す美智恵だが、メドーサはあまり気にした様子もない

ずっと人間と敵対していたメドーサにとっては、ある意味警戒される方が楽だったようである


「やる気かい?」

「貴女に手を出せば、仮に小竜姫様が許しても横島君は許さないわ。 横島君だけは絶対に怒らせたらダメなのよ」

僅かに美智恵を挑発するような笑みを浮かべるメドーサだが、美智恵は悔しそうに言い返すしか出来ない

かつて自分の作戦でルシオラを失いかけた横島が、再び身内に手を出した自分を許すは美智恵は思えなかった

小竜姫の真意を美智恵は相変わらず読めないが、横島ならば小竜姫を説得出来るだろう事も理解している

同じように大切な者の為に過去に来た横島が、身内に手を出して許すはずがない事を美智恵は本能的に感じていた


「いい年して子供みたいな横島を恐れるなんて、美神の名前の噂もたかが知れてるね」

「貴女こそわかってないわ。 横島君の恐ろしさが…… 神族も魔族も妖怪も関係なく味方に出来るなんて、彼にしか不可能なのよ。 あの小竜姫様が魔族と笑って暮らしてるなんて普通に考えて有り得ると思うの? それに貴女の立場がどれだけ恵まれてるか考えたことあるの? 神界や魔界からの干渉もない立場になれるなんて……」

僅かに挑発するメドーサに美智恵は無表情のままそう告げて去っていく

表情にこそ現れないが、その言葉に怒りや憎しみが込められてることにメドーサは気付いていた


「横島忠夫か……、確かに普通じゃないのは確かだね。 しかしあんなお人よしに嫌われるなんて、あんたは何をしたんだろうね」

去りゆく美智恵にメドーサは意味深な笑みを浮かべて言葉をかけるが、返事はないまま美智恵は去っていく



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