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真の歴史へ・その三

「そういえば美神さん霊動シュミレーションを始めたらしいわよ」

さて場所は横島事務所に戻り研究室で情報収集に当たっていたルシオラ達だが、ヒャクメはふと思い出したように令子が霊動シュミレーションを始めた件を語り出した

流石に事務所内部の人間を覗く事は辞めたが、令子や美智恵はたまに覗いてるらしい


「知ってるわよ。 私はあまり詳しくないけど、あれあんまり意味ないんでしょう?」

「全く意味がない訳じゃないわ。 霊波の質を変えれば強くはなるわよ。 ただ神魔は元々霊波や霊体の質が違うから、あれで神魔を越えるのは不可能ね。 強くなってもせいぜい下級神魔上位くらいかしら」

人間の修業に詳しくないルシオラはタマモに尋ねるが、一応修業としては意味があるらしい


「人間がそれ以上強くなるには、肉体をどうにかしなきゃ無理なのよ。 一番簡単なのは魔装術かしらね。 横島のように神魔化する方が確実だけど、それでも上級神魔以上はなれないわ」

タマモは人が神魔に対抗する術をいくつか知るが、どちらにしろ問題になるのは肉体である

かつて令子が小竜姫の竜神の装備を付けたのち全身に筋肉質やダメージを受けた事からも解るように、人間の肉体では下級神魔の域を出るのは不可能なのだ

一方神魔族や妖怪の方だが、こちらも純粋な力の限界点は上級神魔の辺りになっている

それ以上は世界に与える影響の大きさなどから制約がかかる立場でなければ強くなれない

まあ斉天大聖のような例外もあるが、斉天大聖はいろいろと常識では計れない規格外な存在な訳だし……


「美智恵さんがどうするつもりなのか、私にはわからないのねー」

「どうしようもないって言うのが本音だと思うわよ。 そもそも力でアシュタロスに対抗しようってのが間違いなのよ。 まあ美神令子の強化は私達向けの可能性もあるしね」

ヒャクメは美智恵の考えが読めずに首を傾げるが、タマモは令子の強化が自分達への対策の可能性を考えていた

令子を強化して他の人間を巻き込みルシオラやタマモを分断すれば、倒せる可能性はゼロではない

おまけに人質でも取れば可能性は更に上がるのは確実である


「そんな事したら小竜姫が恐いのね」

「そうね、でも小竜姫さんに神族としての制約があると考えるなら悪い作戦じゃないわ」

戦力の分断と各個撃破は割とよくある戦略だが、横島達はその辺りを一番警戒している

現に未来の神魔戦争においても、横島達の分断工作はよく行われたのだ

横島達は四人揃えばいかなる敵にも負けないで戦える自信があるが、一人の力は上級神魔クラスしかない

仮に相手が人間でも油断するつもりはなかった


「結局、時間移動能力を封印してもあの人は変わらなかったわね」

「なまじ優秀なだけに他人を信用出来ない人ですもの。 それに真実が広まれば美神令子が危険になるのは変わらないわ。 今の美神令子をアシュタロスから守ろうなんて人は神父か六道さんくらいじゃないの?」

少し前に時間移動を封印した件を思い出しため息をはくルシオラだが、細かな心境の変化はともかく根本的なものは変わらないことも仕方ないとタマモは言う

結局アシュタロスから令子を守ろうとする人などたかがしれてるし、確実なのは自分一人で動くしかないと考えるのは仕方ない流れであった

ルシオラ達はそんな雑談をしつつ八房の行方を探していく


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