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真の歴史へ・その三

同じ日の朝、小竜姫はいつものように自身が作った朝食を食べさせて、おキヌと愛子を学校に送り出していた

女性陣がそのまま掃除やら洗濯をする中で、横島はケイに文字を教えている

当然だが人間と関わらない妖怪は人間の文字を読めないし、美衣は一応読めるがケイは全く読めなかった

横島達はそんなケイに暇な時間を見つけては、字を教えたりもしている

そんな穏やかな朝に顔色を真っ青にしてバタバタと自室から降りて来たのは、寝坊していたヒャクメだった


「たっ……大変なのねー!! 八房が盗まれたのね!」

慌てた様子でリビングに入るなり叫ぶヒャクメに、横島は思わずポカーンとしてしまう

犬飼ポチが事件を起こすのは歴史的に見ればまだ先の事だし、ルシオラの監視用兵鬼も24時間体制で犬飼ポチを見張っているのだ

まあ犬飼ポチには八房が盗まれるだろうが、シロの父親は救う手筈になっていたのである


「本当なの、ヒャクメさん?」

顔色が真っ青なヒャクメでもルシオラは半信半疑だった

彼女は犬飼ポチの性格や日常行動を常に監視検証しているし、不自然な行動などがあればルシオラにすぐに知らせが入るはずなのだ


「犯人が犬飼ポチじゃないのね!」

このヒャクメの言葉にルシオラは慌てて研究室に戻り監視していた犬飼ポチの映像を確認するが、記録されていたのは八房が盗まれて慌てている人狼達と犬飼ポチだった

横島・小竜姫・タマモ・ヒャクメに老師まで集まり緊急に検証を行うが、はっきりした事は監視していた犬飼などの人間を怨んでいる人狼ではないという事だけである


「まさか、八房が第三者に盗まれるなんて……」

横島は呆然とした様子で考え込んでしまう

犬飼ポチの事件はアシュタロス関連と関係は低いが、歴史に与える影響や規模から言って完全に防ぐのは無理だと事前に結論が出ていた

そのためルシオラは、犬飼ポチと代わりになりそうな数人の人狼の行動監視を続けていたのだ

犬飼ポチが八房を持つ前に行動を察知したいと考えていた横島達は、八房ではなく犬飼ポチなどの反乱を起こしそうな人狼を監視していたのだが完全に裏目に出てしまっていた


「人狼達が犯人を探せないとなると身内じゃないわね。 しかも人狼の能力を知るオカルトのプロのだわ」
 
記録映像を見ていたタマモは外部の犯行だと断定している

人狼の嗅覚や追跡能力は並大抵ではなく、身内が犯人ならば八房か犯人のどちらかは必ず見つけ出せるはずだと理解していた


「問題は他にも、相手が何故八房をこの時期に盗んだのかもですね」

そしてこの時期に八房が盗まれた意味を考えていた、小竜姫の表情は非常に険しい

歴史の修正力の可能性もあれば、偶然の可能性も十分にある

すでに未来とは違う歴史になっているだけに、全く違う事件が起きても不思議ではないのだ

結果的にフェンリルが暴れるような似たような事件が起きるだらう事しか、わかってないのである

歴史に無関係な細かい事など変わる可能性が高いし、細かい事が変わると歴史的な出来事まで微妙に変化する

ある意味当然の事なのだが横島達はこの事件を下手に変え過ぎないために、人狼族への接触や八房の回収などの事前の予防策を取らなかったのだ

今回はそれが裏目に出てそれでもなお変わってしまった為に、急ぎ検証と対策が必要なのである

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