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幻の初恋

教室内は横島が去った後も、クラスメート達がざわめいていた


「クッ… 裏切り者には制裁を加えねば!!」

暗そうな男子達の一部は横島がモテるのが許せないらしく、恨み事をつぶやき制裁をすると息巻いている


「相手は神様だからやめた方がいいと思うのじゃがノー」

そんな連中を遠目で見るタイガーとピートだが、止める気は無いようだ

とばっちりはイヤなのだろう



そんな2人に突然悲劇が襲う!

みんなが騒いでる隙に、ピートとタイガーは長い舌で机の中に取り込まれてしまった


「あれっ… ここは…」

無人の教室と窓から見える不思議な景色に、ピートとタイガーは驚きキョロキョロする


「ごめんね。 ピート君、タイガー君… ちょっとお話があるの」

ニッコリとした笑顔の愛子がどこからともなく現れた


「あっ愛子さん…?」

ピートは愛子の表情を見て、引きつったような笑顔を浮かべている

隣に居たタイガーはすでにピートの後ろに隠れているが、体の大きさからほとんど丸見えであった


「あの小竜姫様ってどんな人? 知ってることは全て教えて欲しいわ」

一応表情はニッコリしているのだが、その笑顔が一切変わらなく、まるで仮面をかぶったように同じ笑顔のままなのである

しかも口調には全くの感情が籠もって無く、全身からは妙な殺気が微妙に流れていた


そんな愛子に、ピートとタイガーは金縛りにあったように動けなくなっている


「いや…、僕も詳しくは知りませんが…」

「アッシは全く知りません!」

嘘のつけないピートは詳しくないと言ってしまうが、タイガーは全く知らないと嘘をつく


「知ってることを教えてね。 なんなら思い出すまでこの空間で2人で過ごしてみる?」

愛子はクスクス笑い2人を見つめる


「はっ…話します! 全部聞いた話ですが!!」

机の妖怪の妙な威圧感に、バンパイアハーフが負けた歴史的瞬間であった


「アッシもほとんど知らないですが、話しますケン」

全身に冷や汗を流し、ガタガタ震えるダメ虎は問題外なようだ



2人が外に出たのは、外の時間でわずか1分後である

中で何が起きたのかはピートとタイガーしか知らない
 
 
クラスメートは2人が居なかった事に誰も気付かなかったが…

突然、魂の抜けたような2人にみんな首を傾げていた


「ピート君、タイガー君。 お願いね」

いつもの調子に戻った愛子は何食わぬ顔で2人に語りかける


「はい! 僕はもう帰ります!」

「アッシも用事があるんで…」

魂の抜けたような2人は、愛子の声にビクッと反応して走って帰っていく


「愛子ちゃん、ピート君達どうしたの?」

「さあ~ なんか急用があるんだって」

1人の女子が不思議そうに問いかけるが、愛子は笑って自分も知らないと告げる


この後、クラスメートはいろいろ騒ぎながら1人また1人と帰っていく


最後に1人になった愛子は無表情のまま窓から外を見つめる


「横島君は私のモノよ」

誰も居ない教室にその呟きは響きわたった


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