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卒業の意味

その頃魔界にある軍の施設では、一人で黙々と的に向けて銃を撃つ女性が居た


バンバンバンバン…


遥かに遠い的を次々に撃ち抜いていく技術は素晴らしいが、 その表情はどこか痛々しくも見える


「心ここにあらずと言った感じだな」

「彼女は死を求めいる節があります。 軍に入った理由も理由ですし…」

そんな女性を遠くから見つめていたのは、ワルキューレとジークであった

そして、何かから逃げるように黙々と銃を撃っているのはベスパである


「まあ、気持ちはわからんでも無いがな…」

複雑そうな表情でベスパを見つめるワルキューレ

ある意味世界の犠牲者とも言えるベスパの現状には同情していた


「小竜姫殿からの件はどうするのですか?」

「無論行くさ。 上層部も許可を出したしな… それに、あいつがわざわざ呼んだんだ。 行かない訳には行くまい」

確認するジークに答えるワルキューレは、少し笑みを浮かべている


「では彼女にも伝えなくては…」

「伝えなくていい。 どうせいい顔はせんだろうしな。 任務だと言って連れていく」
 
ベスパに話を伝えようとしたジークを、ワルキューレが止めた

どうやら何も伝えないで無理矢理連れていくらしい


「姉上変わりましたね」

「そうだな… あいつの馬鹿でも移ったのかもしれんな」

ジークは昔に比べて柔らかくなった姉を見て笑顔を浮かべていた

そのワルキューレは、今日の予定を楽しみにしているようにも見える


「では、人界に行く準備をします」

キリッとした表情に戻ったジークは敬礼をして準備に向かい

ワルキューレはベスパに人界への潜入任務だと伝えて準備にいく



同時刻、妙神山でも待ちきれない様子のパピリオがバタバタと走っていた


「小竜姫ー! まだ行かないんでちゅか!!」

「まだ早いですよ。 あまり早く行くのも失礼になりますし、ヒャクメもまだですからね」

人間の服を着て、人間に化けたパピリオは待ちきれないようで、お昼過ぎから同じ事を何度も言っている

小竜姫はその度にパピリオをなだめつつ、お土産に持って行く料理を作っていた


「遅いでちゅ! 小竜姫もペスも遅いでちゅ!」
 
一刻も早く行きたいパピリオは我慢が出来ないようで、ソワソワと歩き回る


「全く子供なんだから…」

少し苦笑いを浮かべる小竜姫だが、パピリオは実際まだ生まれて数年だ

しかもあの事件の後初めて人界に降りるのである

あれくらい騒ぐのは仕方ないと笑顔を浮かべていた


「お久しぶりなのね~」

「ペスは来るのが遅いでちゅ!」

ようやく現れたヒャクメにほっぺを膨らませて文句を付けるパピリオ


「えっ!? 小竜姫は夕方までに来るように言ってたわよ?」

来た途端に文句を言われてヒャクメは驚いてしまう


「パピは早く行きたいんでちゅ!」

ソワソワと落ち着きのないパピリオを見てヒャクメは事情を悟る


「クスクス… そんなに慌てなくても横島さんは逃げないのねー」

笑うヒャクメをパピリオは引っ張るように、小竜姫の元に連れていく

妙神山は久しぶりに賑やかであった
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