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麻帆良祭

「騙された……?」

「こんなの騙したうちに入らないわよ。 ただ彼は負けたら麻帆良を去り、貴方達は勝敗問わず麻帆良を去るだけ。 結果として彼はどちらにしても那波さんを守って終わるのよ」

男達は横島に騙されたと睨むが、朝倉からすれば騙したというよりは男達があまりに馬鹿だったと言うしかなかった

要は男達が千鶴も世間もきちんと見てなかっただけである


「早く対決内容決めてくれない? 私達も暇じゃないのよ」

ニヤリと意味深な笑みを浮かべる朝倉は男達に早く覚悟を決めるように促すが、男達は一目散に逃げ出してしまう

その瞬間横島と報道部の者達は爆笑してしまい、木乃香達は相変わらずポカーンとしたままであった


「ちょっと待って。 じゃあ勝負するって話は?」

「始めから勝負などするつもりはなかったのですよ。 横島さんはあの人達を合法的に追い詰めようとしただけです」

男達が逃げ出して横島達が爆笑した結果ようやく頭が動き出した明日菜は事態の説明を夕映に求めるが、彼女が説明した通り横島はあの連中との勝負などするつもりがなかったと聞くと信じられないように横島を見つめる


「いや~、忙しい時に面倒なこと頼んで悪かったな。 お礼は落ち着いたらするよ」

「また面白いことがあったらよろしくね」

一方横島は笑いが収まらない中で朝倉と報道部の面々にお礼を言っていた

どうやら横島と彼女達はグルだったようである


「後は任せて。 天文部と連携してあの連中が今後那波さんに近寄れないように警告しておくわ」

全てが終わると忙しい朝倉と報道部の者達は後始末の話をして去って行き、残されたのはスッキリした表情の横島と驚きの少女達だった


そして一番驚いていたのは、他ならぬ当事者の千鶴である

彼女は木乃香達と合流する前から何度も横島を止めようとしたのだが、横島が無言のまま任せるように千鶴を押し止めていたのだ

それは普段の横島からは決して感じられない頼もしさと力強さだった

正直千鶴としては横島と一緒の姿を見せて、彼らが自分から興味を無くしてくれればいいと考えていたのである

この点では千鶴も少し考えが甘かったし男達の執念を甘く見ていた

千鶴が与えた刺激に男達は興味を失うどころか、今まで以上に暴走をしたのだから

だが今までも似たようなことは何度かあったのも事実である

千鶴の小学時代の友人の男性などに千鶴の居ない場所で嫌がらせ紛いのことをしたなど、事件にならない程度のネチネチとした行動は過去にもあったのだ

今まで散々悩んだだけに、予期せぬ暴走が起きたのを待っていたかのようにあっさりと解決した横島が信じられなかった


「それじゃ、気を取り直してパッと昼飯にすっか!」

結局いつの間にかいつもと変わらぬ雰囲気に戻っている横島を、千鶴はただ見つめることしか出来ない

先程見た頼もしさや力強さ、そして絡めていた腕に残る寂しさを胸に秘めたままに……



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