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麻帆良祭

プラネタリウムを後にした横島と千鶴だったが、着いて来る男達が一人二人と増えていく

どうも千鶴が男と二人で麻帆良祭をデートしてるとの情報が、千鶴を狙う男達やその友人に回って珍しい物見たさにも集まっているらしい


「このままあの連中を海にでも連れて行って沈めるか?」

「ぜひ、お願いします」

そんな中で次々に集まる男達に横島は思わず本音をポロリと口にするが、千鶴は迷うことなく気持ちがいいほどの笑顔で乗ってしまう

嫉妬の視線を向けられる横島以上に千鶴の方がストレスが溜まってるのかもしれない


「まあ俺はあの連中の気持ちも分からんでもないんだけどな」

千鶴は笑顔を崩さないし自分からは愚痴もこぼさないが、実際はかなりの息苦しさを感じてるのは横島も理解している

日頃から注目を集めるのは精神的な負担が大きいのだろう


「マスターだけは他の男の人と違うように感じるんです」

双方の気持ちを理解する横島は困ったような表情を僅かに見せるが、千鶴はすでに横島と他の男の違いに気付いている

よく言えば下心がないだけだし、悪く言えば興味がないように見えるのだ

実際それだけならば普通の男性と変わらないのだが、横島の視線が木乃香達と同じ事実は千鶴にとって驚きなのである


「それに時々とても優しい目をしてるのは何故ですか?」

そして千鶴が最も気になっているのは、横島が木乃香達や千鶴に時々見せるとても優しい目であった

まるで血を分けた両親のように優しい目をする横島が千鶴は不思議で仕方ないのかもしれない


「なんか壮大な勘違いがあるみたいだな~ 俺もあいつらと同じだよ。 ただ方法が違うだけでさ」

「私、わかるんですよ。 そういう環境で育ちましたから」

腕を組んだまま他人には聞こえないような声で会話する二人だが、横島は千鶴の指摘を勘違いだと言い切り笑っている

加えて自分も後ろにいる男達と同じだと言うが千鶴は全く信じる気配すらない


「なら答えは自分で見つければいいと思うぞ。 千鶴ちゃんなら求めるモノに辿り着けるだろうよ」

その言葉に千鶴は突然立ち止まると、横島の手を握ったまま静かに見つめる

道の真ん中で突然立ち止まり見つめ合う横島と千鶴に尾行組は慌てて隠れ、何をするのかと息を飲む


「以前お祖母様が言ってました。 迷う時は相手を感じなさいと。 例え目に見えるモノが嘘でも心は嘘を付けないはずだと……」

そっと目を閉じて横島を感じようとする千鶴に、横島は僅かに戸惑ってしまう

確かに目を欺くことは簡単だが、心を欺くことは横島とて簡単ではない

まして真っすぐ感じようとする千鶴を欺くことを横島が出来るはずもなく……



一方横島の真実に迫ろうとしていた千鶴だったが、尾行組から見れば違う様子に見えている

あえて説明する必要もないのかもしれないが、横島を見つめ瞳を閉じた千鶴はまるでキスを待つような仕種に見えるのだ

そしてそれは千鶴の追っかけも木乃香達も同じだった



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