「恥ずかしいとこ見せちまったな。　のどかちゃん大丈夫か？」

一通り話を聞いたガンドルフィーニ達が居なくなると、横島はのどかの様子を見ながらも申し訳なさそうに苦笑いを浮かべる


「大丈夫です」

「横島さんが謝ることではないですよ」

みんなが心配そうにのどかを見守るが、それほど精神的なショックはないようだ

何より明日菜が早々に助け出したのがよかったのだろう


「マスターなかなかやるじゃん」

「弱いのに頑張ったね」

一方少女達の横島への評価というか反応だが、予想に反してよかった

特に美砂達三人は横島が頑張ったと褒めるような慰めのような言葉を口にする

横島としては幻滅でもされるかとも思ったが、元々弱いと見られていた為に逆に頑張ったと励まされてしまったようだ


（本当にケンカが出来ないのでしょうか？）

そんな中夕映は横島がケンカが苦手だという事実自体を多少疑っている

美砂達は知らないが横島は、図書館探検部で重い荷物を持ち夕映達を引っ張り上げるなど肉体労働を担当しているのだ

腕力などが見た目に反してあるのを知っている夕映としては、案外最低限の護身術くらいはできるのではと考えていた

以前に海外を放浪していたと言う話もあるし、今回のような危機を乗り越えた経験があっても不思議ではないと考えたようである


そして横島の他にもあの場を制圧出来る力があった茶々丸だが、彼女は密かに男達を制圧する準備をしつつタイミングを見計らっていた

茶々丸の力があればあの程度の一般人の制圧など簡単なのだが、ふと横島がどうするのか気になって見ていたのだ

実際のところ横島の実力を計り兼ねている茶々丸だったが、エヴァを恐れない態度といいあの程度の一般人に負けるとは思えない

横島が動いたら加勢するつもりで考えていたが、結果はガンドルフィーニの到着が早かったのである


（まさか護衛が居るのを知っているのでしょうか？）

基本的にＡＩである茶々丸は合理的な考えの持ち主だった

ずっと木乃香の護衛と思われる魔法関係者が、着かず離れずの距離に居るのも当然気付いている

あの時の横島の行動は時間稼ぎにも見えた茶々丸は、横島が魔法関係者が来る時間を稼いでいたのかもしれないと考えていた
　
　
（マスターの予感は正しいのかも知れません）

そこまで考えた茶々丸は、数日前にエヴァがさよの友達にされた日の帰り道でのことを思い出していく


「あの男、敵に回さない方がいいかもしれん」

横島の店で朝食を食べて満足そうだったエヴァだが、ふと思い出したかのように一言つぶやいていた


「何かあったのですか？」

「あの男は少し不自然過ぎる。　いかに私の正体を知り封じられてると知っていても、あれほど脅えも恐れも感じない人間は普通ではない」

不思議そうに尋ねた々丸に対し、エヴァはそう告げると後ろを振り返り横島の店の方角に視線を向ける


「茶々丸。　もしお前が私が居ない場所で何かあれば、あいつを頼った方がいいだろうな」

僅かにため息をついたエヴァはそんな予言めいた言葉を茶々丸に残すと再び無言になり、その後は横島のことを話すことはなかったのだ