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真の歴史へ・その三

一方、令子達が消えたオカルトGメンでは美智恵とカオスが静かに令子達の帰還を待っていた


「おぬしは随分落ち着いておるのう。 娘が心配ではないのか?」

書類整理などしつつ冷静に待つ美智恵を、カオスは少し興味深そうに見つめている

時間移動先を探る訳でもなく無事を祈る訳でもない美智恵が少し気になるらしい


「私達に出来る事はないとおっしゃったのは、ドクターカオスではありませんか。 それに私は娘を信じてます」

カオスの問い掛けにも淡々と答える美智恵は言葉はあくまでも冷静だった

しかしカオスはそんな美智恵を訝しげに見つめる


「おぬし、まさか結末を知っておるのか?」

その言葉に美智恵の表情が僅かに強張った

千年を越えるカオスから見て、美智恵はあまりに落ち着き過ぎなのである

美神親子の関係は知らないが手元に置くほどの仲ならば多少の動揺があって当然だし、何より助けに行く方法くらいは考えようとするはずなのだ

不自然なほど冷静で何もしない美智恵を見て、カオスは美智恵が時間移動で未来を知る可能性に辿り着いていた


(流石はドクターカオスね…… だいぶボケてるようだけど、ここ一番の勘や閃きは恐ろしさすら感じるわ)

美智恵とてカオスをナメていた訳ではない

しかしまさかボケてるカオスに自分の秘密の一部をアッサリ見抜かれるとは思わなかったのだ


「申し訳ありませんか、その件にはお答え出来ません。 時間移動能力に関しても、魔族に狙われてますので他言無用に願います」

美智恵の表情が強張ったのは僅か一瞬の出来事だった

次の瞬間には冷静に詮索無用と言わんばかりの言葉をカオスに返す


「まあ、ワシには関係ないか。 ただ一つ、マリアは無事に戻るかの?」

幾分探るような視線を美智恵に送るカオスだが、結局自分には関係ないしマリアが無事に戻るなら後は興味がなかった

美智恵はその言葉に返事をしなかったが、同時に否定もしなかった

美智恵自身未来を知るが、今回の時間移動の結末は知らないのだ

ただ一つ、横島達が過去に行っただろう事は確信している

横島達が過去に行ったならばマリアは無事に戻るだろうし、令子と西条も無事に戻るだろうと考えていた


(横島君は必ずアシュタロス戦までは令子を守るわ。 魂の結晶が過去で転生に行けば、この時代の三姉妹が生まれなくなる)

美智恵は横島達がこの時代の三姉妹に固執している事を知っている

この時代の初対面の時に横島はベスパとパピリオが大切だと語ったのだから

ルシオラに関してはすでに存在しているので誕生するか解らないが、恐らくベスパとパピリオが誕生するまでは横島達も令子を守ると美智恵は確信していた


(貴方の考えは私にはわかるわ。 ベスパとパピリオの二人を見捨てる事なんて出来ないわよね。 例え神に逆らっても……)

皮肉な事に美智恵が共感を感じ信じていたのは横島だった

美智恵はかつて利用した横島に複雑な感情を抱えているが、同時に共感もしている

何があっても大切な人を守るという決意は、自分と似ていると美智恵は感じていたのだ

未熟な令子や西条を死なない程度には助けるだろうと、何故か美智恵は信じていた


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