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麻帆良祭

「俺、茶道初めてだわ」

爽やかな初夏の風が吹き抜ける中で野点を始める横島達だが、横島が茶道の経験がないと告げると明日菜とのどかは半分疑うような視線を向ける


「なんでそんな疑うような視線を向けるんだ?」

「横島さんの出来ないって言うのはアテにならないのよね」

明日菜達の疑うような視線に横島は困惑するが、明日菜とのどかは何度か横島が苦手だと聞いたことを卒なくこなした事からあまり信じてないようだ


「出来ないとは言ってないよ。 作法くらいは知ってるしな。 ただ茶道をするのが始めてだってだけだよ」

疑う明日菜とのどかに横島はわざとらしく寂しそうな視線を向けるが、言ってることは言葉の揚げ足取りに近かった

結局そのまま大声で騒いだりはしないが、他の人達よりは賑やかな野点が続いていく



野点を終えると横島達は、茶々丸を加えて七人になり天文部のプラネタリウムに向かう

途中で木乃香と夕映も合流してますます人数が増えるが、別に横島が呼んでる訳ではなく彼女達クラスメートの仲がいいだけである


「ねえお嬢ちゃん達、一緒に遊びに行かない?」

そのまま楽しく歩いていた横島達だが人通りの少ない路地を歩いている時、十人ほどの若い男達に声をかけられてしまう

年齢は高校生くらいか大学生くらいであり、かなり酔っ払ってるいかにもガラが悪い感じの男達である

ちょうど人数的にもよく、男が弱そうな横島一人なだけに声をかけたようだ


「結構です」

ナンパに慣れているのか美砂が相手にもしないで断りみんな足早に先を急ごうとするのだが、男達は気弱そうなのどかの手を掴み無理矢理でも話を聞かせようとする


「すんませんけど先を急いでるんで、勘弁して下さい」

のどかが手を掴まれたことで明日菜や美砂や円は怒りの表情になり、のどか本人や夕映などは固まっていた

横島はたまらず仲裁に入り相手を刺激しないように話を始めるが、それが逆に相手にナメられて付け上がらせてしまう


「頼み方が違うんじゅねえか? 土下座して財布だせよ」

泥酔の一歩手間の男達は横島を馬鹿にしたように爆笑するが、横島本人は顔色一つ変えない

しかしその言葉に横島は無反応でも少女達の怒りが更に高まって、明日菜は強引にでものどかを取り戻そうと動き出してしまう


「やんのか?、お嬢ちゃん」

「こんな情けねえ男ほっといて俺達と遊ぼうぜ」

明日菜は強引にのどかと男達を引き離し守るような姿勢で庇うが、男達は面白そうに明日菜を見て笑っている

最早穏便に済ませることは誰が見ても不可能だった


「本当に土下座と金払えば、俺達に構わないでくれるのか?」

その瞬間横島の声が聞こえた男達はまた爆笑してしまうが、何故かその笑い声は長く続かないで一人また一人と黙ってしまう

男達の顔には驚きや戸惑いが一気に広がり、いつの間にか別人のような冷たい表情に変わっている横島に言葉が出ない


「野郎、殺すぞ!」

多くの男達は声も出なく先程までの酔いが一気に醒めていたが、一人だけ鈍感なのか馬鹿なのか元気な男が表情が変わっている横島の胸倉を掴む

感情が消えて無機質な瞳の横島が、男は気に食わなかったらしい


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