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真の歴史へ・その三

城の中だが、ザコソルジャーが見回りをしている以外は人が居なかった

横島の記憶では領主が洗脳されているとヌルから聞いたが、領主どころか城の人間すら居ない


「こっちなのね」

ヒャクメが辺りを警戒しながら道案内して横島達は慎重に進んでいく

周囲の監視と目的の場所を探す透視の両方を同時にするには、やはりヒャクメに叶う者は居なかった


「映画に出てくるスパイみたいでワクワクするのねー」

「まあ、やってる事は一緒だからな」

たまに緊張感が抜けるヒャクメに横島は微妙に苦笑いを浮かべて答える

少数で生き残る力を得る為とはいえ、決して褒められた行動でないのは横島も十分自覚している


(本当は美神美智恵さんの事、どうのこうの言える立場じゃないんだよな~)

元々横島は正義とは無縁の価値観で生きて来たので抵抗はないが、美智恵の行動を非難する資格などないのは一番理解していた

もし仮に今ルシオラ達が世界に追われる立場になれば、横島は間違いなくルシオラ達を守るだろう

仮にそれが再び破滅への道を歩むと知っていても……


(ただ感情としては理解するんだけど、やり方がな……)

横島と美智恵の一番の違いは人を信用するかどうかだろう

メドーサの件もそうだが、横島は出来るならば相手を信じて行きたいのだ

対して美智恵は徹底した孤立主義で全て自分だけで解決しようとする

どちらがいいかなど誰にもわからないが、似てるようで正反対の横島と美智恵が今だに和解出来ないのはそんな根本的な価値観の違いが原因だろう



「ここがヌルの研究室か。 ヌル本人は居ないようね。 カオスさん達への対応で忙しいか……」

横島が少し考え事をしてる間に城の中心部に近い場所に到着した横島達は、ヌルの研究室の前に来ていた

この辺りは空間をいじったりしてる場所が多く、モンスター工場も城と異空間とが複雑に絡み合っている

ルシオラとヒャクメは罠やセキュリティがないか詳しく調べて、慎重に研究室に入っていく


「これは……」

研究室の中は大量の物で溢れていて、まるでゴミ屋敷のようであった

横島達は思わず顔を背けて見なかった事にしたかったが、ここまで来ておいてそれは出来ない


「ルシオラ、この中から使える資料探すのか?」

「ええ……、本当はデータが入った兵鬼でもあれば楽だったんだけど……」

顔を引き攣らせて問い掛ける横島に、ルシオラも戸惑いを隠せない

この時代でも記憶媒体の兵鬼などは魔界には存在するが、この部屋には見当たらないのだ


「もしかして、ヌルの奴はそんな兵鬼持ってないんじゃないか? あいつ頭いいの自慢してたし……」

ふと思った事を口にした横島の言葉にルシオラはピキッと固まる

未来での横島の話から記憶媒体の兵鬼くらいは使っているだろうと考えていたルシオラは、予想外にアナログなヌルに頭を抱えてしまう


「……とりあえず、少し資料を探しましょう」

乱雑に置かれた本や紙や魔法アイテムを見てため息を吐いたルシオラの言葉で、横島とヒャクメも仕方なくゴミのような物の中から資料を探し始める


「やっぱ、こいつのテクノロジーって凄いんだか何だか……」

かつてのヌルの話を思い出して、横島は何故か懐かしい気持ちになりつつ使えそうな資料を探していく


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