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真の歴史へ・その三

同じ頃、鬼天号の中でも話はカオスの話題で持ち切りだった


「あれが、あのじいさんかよ」

GS試験の時のカオスのイメージからすると、この時代のカオスはやはり予想を遥かに越える存在である

カオスに対してあまり興味がなかった雪之丞ですら、令子や西条と同じく驚愕するくらいに


「本当に凄いわ。 この時代にたった一人で飛行機を作るなんて…… ヌルが目を付けて当然ね」

雪之丞とほぼ同時にカオスに目を輝かせていたのはルシオラである

同じ技術者として、この時代のカオスは尊敬に値すると思うのだ

ルシオラも技術者だが彼女の技術は自分で積み上げたモノではなく、全てアシュタロスにより与えられた技術だった

今のルシオラは与えられた技術を自分のモノにして日々発展させる研究を続けているが、だからこそ一からあそこまでたどり着いたカオスに対して尊敬や畏怖の感情を感じてしまう

ルシオラの場合は横島達など周りの理解や協力があるので資金も環境も十分だが、天才過ぎるカオスの苦労は並大抵ではないだろうと気付いていた


「確かマリアもほぼ完成してたはず…… バロンといいカオスフライヤーといい本当の天才って奴だな」

「元の時代ではボケたじいさんだけど、この時代は凄いわね~ 私も前世で何人も天才って呼ばれる存在と会ったけど、あそこまでじゃなかったわ」

かつて自分が中世に来た時のカオスを懐かしむ横島に、タマモは珍しく興味津々な様子で語りかける

前世を加えると一番長い時を生きてきたタマモは数々の人や人外と出会い別れて来たが、そのタマモから見てもカオスは驚くべき存在だった


「もう少し普通なら歴史に名を残せたでしょうに……」

「天才すぎて人間には理解されなかった人ですからね。 神魔界では有名人ですが」

ボソッとつぶやいたタマモの言葉に、小竜姫が複雑そうに同意する

カオスに関しては、どちらかと言えば神魔界の方が知名度が高いのだ

過ぎた才能と能力により人間に評価されない孤高の錬金術師として割と有名だった


「ドクターカオスも過去に神界からの神族入りを要請されて拒否した人なのねー 噂では魔界からも誘いがあったらしいわよ」

横島達がみんな若かりしカオスに集中する中で、ヒャクメは意外な情報を漏らす

この情報は一部の情報関係の神族しか知らない事だが、過去にカオスの技術を欲した神魔界がスカウトしたらしい

タマモに関しても前世で同じようなスカウトがあったが、デタントが始まる前の神魔冷戦時代は両界ともそんな事がよくあったようである


「俺達の出番はないかもな」

横島としては、歴史通りにカオスがヌルを退治してくれればそれが一番だった

現代でもそうだが、横島達が動くと歴史の変化が大きすぎるのだ

些細な歴史の変化がどこに現れるかわからない以上、出来ればこのまま歴史通りに終わって欲しい



「うむ……」

一方ヌルの部下達を撃退したカオスだが、実際に倒したのは火竜やガーゴイルを除けば三割にも満たない数だった

火竜やガーゴイルが倒されると鎧兵士達は早々に逃げ出したのだ

カオスは残された火竜やガーゴイルや鎧兵士達の遺体を調べて回るが、その表情は険しい


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