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麻帆良祭

さて少女達と前夜祭を楽しんでいた横島だが、ひと足に仮設店舗に戻り明日の仕込みや明日以降の発注など仕事に取り掛かっていた

何と言っても明日からの本番がメインであり、今日まで以上の客が来ることが予想される

本番三日間の成功の鍵は仕込みだと言えるほど仕込みは重要であった

志願した数人の少女達と共に前日から行う分の仕込みをしていくが、少女達は仕込みをしながらも本番がどうなるのか楽しみで仕方ないようである

今までも祭期間中と言えるほどの賑わいの日々だったが、やはり本番は違うようで前夜祭独特の空気が厨房内をも支配していたのだ


「世界樹伝説?」

「そう、学園祭最終日に世界樹の下で告白すれば必ず恋人になれるんだよ」

仕込みも一段落した頃、明日からの麻帆良祭本番の話で盛り上がっていた少女達は《世界樹伝説》の噂をしていた

どうやら横島は世界樹伝説を知らなかったようでどんな内容なのかと尋ねるが、それはよくあるような迷信めいた伝説である


「知らなかったな~」

「麻帆良ではみんな知ってるよ」

まき絵などは麻帆良じゃ常識だと言い切りどこの誰が成功したとか噂を持ち出すが、当然実際には本当か怪しい噂も多い


(みんな知ってる伝説ってことは、最終日に世界樹の下に一緒に行った時点で告白なの分かってるんだろ。 そりゃ確率上がるわ)

世界樹の御利益だと騒ぐ少女達に思わず笑顔になる横島だが、告白されると分かってる以上は世界樹の下に行った時点で脈ありなのが当然ではと考えてしまう

仮に脈がないならば世界樹の下に行くのを避けるだろうことは想像に難しくない

まあ少女達の夢に水を差すつもりはないので口には出さないが……

横島もまさかその伝説が実際にある話と繋がってるとは思ってもないようだ


「毎年最終日になると世界樹が光るのよね。 噂の元はそこだと思うわよ」

「光るのか?」

少女達が告白の噂で騒ぐ中で明日菜はネタばらしのつもりで毎年麻帆良祭最終日の世界樹の発光現象が原因ではと言うが、横島は僅かに興味深げな表情になる


「なんでかは知らないけど、毎年最終日は光るの。 特に夜は綺麗に見えるわよ」

理由はよく分からないし明日菜以外も誰も知らないようだが、麻帆良祭最終日に世界樹が発光するのはみんな知っていた

横島としては蟠桃が光るなど聞いたことがなかったが、麻帆良の蟠桃がオリジナルと微妙に違うのも理解している


(そういやここ数日魔力濃度が上がってるが、なんか関係あるのか?)

未知への好奇心からしばし考え込む横島だが、原因らしい原因は知らないし麻帆良祭に近づくにつれ麻帆良の魔力濃度が上昇してるくらいしか分からない


(あの蟠桃、随分魔力溜め込んでるしな。 放出でもしてるのか? そもそもあれは神界の木だからな)

世界樹に関しては一応土偶羅が調査してるが、神界の蟠桃とは微妙に違うことくらいしか調べてなかった

珍しい例なので調査はしてるが、特別危険でもなければ早急な調査が必要な訳でもない

従って横島も詳しいことは知らなかったようだ



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